2011 Fiscal Year Annual Research Report
HCV感染症におけるトリプトファン代謝酵素による免疫トレランス誘導機構の解明
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22590730
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
笠原 彰紀 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (70214286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
考藤 達哉 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (80372613)
平松 直樹 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (30362700)
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Keywords | HCV / IDO / トリプトファン / キヌレニン / 樹状細胞 |
Research Abstract |
HCVの持続感染成立、抗ウイルス療法に対する抵抗性、肝発癌には免疫異常が関与している。HCV感染症では様々な免疫細胞に機能低下が認められるが、免疫細胞へのHCV感染効率は低いことから、HCV感染非依存性の機序が想定される。本研究では、HCVによる免疫能低下機序として、HCV感染細胞(肝細胞、免疫細胞)が非感染細胞にトレランス誘導能を付与するというInfectious toleranceを想定し、そのメディエーターとして、トリプトファン代謝酵素(Indoleamine 2,3-dioxygenase,IDO)の関与を明らかにすることを目的とする。前年度までの研究で、1)C型肝炎患者の血漿中キヌレニン濃度(Kyn)(IDO活性の指標)は非感染者より高値であること、2)血漿中Kyn値の増加に免疫細胞(樹状細胞)の関与が考えられること、3)C型肝炎患者の樹状細胞は炎症刺激によってIDO活性が亢進し、制御性T細胞の誘導に関与すること、などが明らかになった。今年度はC型肝炎患者において、1)IDO活性亢進の機序、2)ペグIFNα/リバビリン併用療法の治療効果への関与、を明らかにすることを目標とした。 C型慢性肝炎患者160人を対象とした解析では、血漿中Kyn値は、肝組織でのActivity(A因子)、Fibrosis(F因子)と正相関を認めた。また血小板数とは逆相関した。他の臨床マーカー(年齢、性別、HCVRNA量、HCVセロタイプ、IL28B SNP major/minorなど)とは相関を認めなかった。全例を対象とした単変量解析では、血漿Kyn値はSVR、NVRを規定する因子として抽出されなかったが、IL28B SNP minorに限った検討すると、単変量解析では、血漿Kyn値が低い方が、SVR率が高かった。また多変量解析でも低Kyn値が、IL28B minorでのSVRを寄与する因子として抽出された。以上の結果より、C型慢性肝炎では、肝臓の炎症、線維化の進展にともなってIDO活性が亢進しており、IDO活性の亢進はペグIFNα/リバビリン治療における難治要因となることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度、今年度の研究によって、1)C型慢性肝炎患者ではIDO活性が亢進しており、その機序として肝組織の炎症と線維化が関与すること、2)C型慢性肝炎患者樹状細胞は、炎症刺激によってIDOを高発現すること、3)樹状細胞のIDOは制御性T細胞の誘導に関与すること、4)IL28B SNP minor群では、IDO活性が低いほどSVRが期待できること、などが明らかになった。以上の結果は、C型慢性肝炎の病態を理解し、抗HCV免疫療法を開発するために重要な知見であり、研究は当初の予定通り進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの研究から、IDO活性の亢進がC型慢性肝炎の難治要因の一つであることが明らかになった。次年度は、IDOの免疫学的作用機序を解明し、IDO活性を抑制する分子標的を同定することを目標とする。
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Research Products
(10 results)