2010 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー病における糖タンパクの糖鎖異常の解析
Project/Area Number |
22590933
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
浦上 克哉 鳥取大学, 医学部, 教授 (30213507)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 美也子 鳥取大学, 医学部, 助教 (50335527)
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Keywords | アルツハイマー病 / 脳神経疾患 / 糖鎖 / 診断マーカー |
Research Abstract |
本年度は、アルツハイマー病(AD)の血液中で糖鎖に異常があることが判っているトランスフェリンの糖鎖量の測定と、ADで糖鎖異常の可能性のある新規タンパクの糖鎖量の測定を行った。 トランスフェリンの糖鎖は、ADの血清中でシアル酸量が減少しており、ADを臨床症状で分類した極軽度群(CDR 0.5)~中等度群(CDR 2)いずれにおいても同様に減少していた。また、同一患者の髄液中のリン酸化タウタンパク(p-tau 181)とアミロイドβタンパク(Aβ)を測定し、これらの値から脳内の異常の程度でADを極軽度群~中等度群に分類した場合でも、いずれの群でも一律に低下していた。これらのことからトランスフェリンのシアル酸量の変化はADの極早期で起こっており、早期血液診断マーカーとしての可能性が高いことが分かった。さらに、シアル酸を付加する酵素であるシアル酸転移酵素を測定したところ、ADの転移酵素量とシアル酸量には相関があることが判り、ADの血清中トランスフェリンのシアル酸量の減少は転移酵素が原因である可能性が示唆された。 また、新規の糖タンパクについても血清中の糖鎖量(マンノースとN-アセチルグルコサミン)を測定した。いずれの糖鎖もADの血清中で有意に減少していることが分かった。また、この減少は髄液中のAβと相関していることから、これらの糖鎖量の変化は脳内のAβの動態を反映している指標であることが示唆された。さらにこの糖タンパクは補体系関連タンパクであるのだが、血清中の補体活性(古典経路)を同時に測定したところ、糖鎖量と補体活性には関連のあることが判り、この糖タンパクの糖鎖の変化がADの補体活性化に影響を与えていることも示唆された。
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