2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳GTPシクロヒドロラーゼIの生化学的研究によるドーパ反応性ジストニーの病態解明
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22590941
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
古川 芳明 順天堂大学, 医学部, 教授 (10219107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志村 秀樹 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50286746)
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Keywords | GTPシクロヒドロラーゼI / テトラヒドロビオプテリン / ドーパ反応性ジストニー / 神経化学 / 剖検脳 |
Research Abstract |
ドーパ反応性ジストニー症例の多くは、テトラヒドロビオプテリン(ドーパミン合成系のチロシン水酸化酵素およびセロトニン合成系のトリプトファン水酸化酵素の補酵素)生合成経路の律速酵素であるGTPシクロヒドロラーゼIの遺伝子(GCH1)に異常を有している。今回ヒトの凍結剖検脳を用いて世界で初めてGTPシクロヒドロラーゼI蛋白質の定量を行い、神経/精神学的に正常な剖検脳では赤核・黒質(緻密層)・淡蒼球(内節と外節)・被殻・尾状核等において発現が高く、その脳内分布はテトラヒドロビオプテリンの分布と一致している事を明らかにした後、黒質線条体ドーパミンニューロンの変性・脱落をきたすパーキンソン病および多系統萎縮症の被殻と尾状核では、正常コントロール群(死亡年齢と剖検までの時間は疾患群と一致)と比較し、GTPシクロヒドロラーゼI蛋白質量はそれぞれ有意に低下していることを示した。また、GCH1に変異を有するドーパ反応性ジストニー症例(19歳)の線条体で、GTPシクロヒドロラーゼI蛋白質量は同年齢の正常コントロール群と比較して明らかに低下しており、その程度は被殻で-83%・尾状核で-66%に至り、パーキンソン病および多系統萎縮症において認められた減少よりも著しいことを見出した。ドーパ反応性ジストニー症例の淡蒼球外節でも-73%に至る低下を確認した。以上の結果より、この常染色体優性遺伝を示すドーパ反応性ジストニーでは転写または翻訳レベルでdominant-negative効果が存在していることが初めて示唆された。今後、他のドーパ反応性ジストニー症例(無症候性キャリアを含む)剖検脳の検索を行い、またヒト脳の発達と老化が線条体GTPシクロヒドロラーゼI蛋白質量におよぼす影響をさらに検討し、常染色体優性ドーパ反応性ジストニーの発症機序を解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
測定方法は既に確立されており、凍結脳組織切片の準備も整っている。ドーパ反応性ジストニー症例(無症候性キャリアを含む)の死亡年齢にバラツキがあるため、現在それぞれ年齢と剖検までの時間が一致している正常コントロール群との比較を行いながら研究を進めており、最終的には他の年齢の正常コントロールも全て含めて検討し、ヒト脳の発達と老化がGTPシクロヒドロラーゼI蛋白質量におよぼす影響も解明する計画であり順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ドーパ反応性ジストニー・DYT1ジストニー・パーキンソン病・多系統萎縮症における脳GTPシクロヒドロラーゼI蛋白質量の状態(正常で高発現の線条体等)を詳細に検討し、またGTPシクロヒドロラーゼIおよび関連酵素とそれぞれの生合成産物の加齢(生後1日目から99歳まで)による変化が、GTPシクロヒドロラーゼI欠乏性ドーパ反応性ジストニーの発症にどの様に関与しているのか考察し、この常染色体優性ドーパ反応性ジストニーの発症機序を解明する。
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