2011 Fiscal Year Annual Research Report
インスリン抵抗性とGLUT4トランスロケーションの障害に関する研究
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22590969
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
神崎 展 東北大学, 大学院・医工学研究科, 准教授 (10272262)
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Keywords | GLUT4 / インスリン抵抗性 / 細胞内小胞輸送系 / イメージング / ソーティング障害 / ゴルジ体 / 脂肪細胞 / 筋細胞 |
Research Abstract |
インスリン抵抗性病態では、Vps10p受容体ファミリーに属するSortilinの減少とGLUT4(インスリン反応性糖輸送担体)のトランスロケーション障害が生じていることを昨年度までに明らかにしている。本年度は、独自に開発した「単一分子ライブイメージング解析手法」を駆使することにより世界最高精度にてGLUT4分子挙動をナノ計測し、Sortilinが減少した病態時における病態分子機序を解明するこどを試みた。 その結果、(1)Sortilinは再循環エンドソームからトランスゴルジ網(TGN)へのGLUT4分子選択的な逆行性輸送に必須の役割を果たすこと、(2)このSortilin依存性のGLUT4逆行性輸送にはRetromer複合体とgolgin-97による協調作業が関与すること、(3)TGNへとソーティングされたGLUT4分子はこの領域に繋留され、その結果GLUT4の分子動態は極めて低く保持されていること、(4)TGN領域にて繋留されたGLUT4分子(小胞)がインスリン刺激に反応して放出されるためにはRabGAPとして機能するAS160/Tbc1d4(とそのAkt依存性リン酸化反応)が必須であることをGLUT4分子動態ナノ計測法により世界で初めて解明することに成功した。よって、(5)病態時においてSortilin減少が惹起されると、上述したGLUT4分子の適正なソーティングに障害が生じ、結果としてインスリン反応性を所持するGLUT4小胞の形成不全が起きていると考えられた。これらの研究成果は、これまでに明らかにされている「シグナル伝達系の減弱」に加えて、「ソーティング障害」に起因したインスリン抵抗性病態の発症機序が存在することを示す非常に重要な新知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
インスリン抵抗性病態時におけるGLUT4(インスリン反応性糖輸送体)のトランスロケーション障害について理解するために、「生化学的解析」と「生細胞イメージング解析」を推進した。パルミチン酸誘導性の病態時では、PKCθの異常活性化によるSortilinの遺伝子発現抑制と蛋白寿命減少が惹起されることを生化学的に明らかにした。さらにSortilinの減少がいかにして「GLUT4トランスロケーション障害」を引き起こしているのか、その病態分子基盤を独自のナノ計測技術によって世界最高精度にて明らかにすることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた研究計画を達成し、インスリン抵抗性病態の新たな発症機序として「ソーティング障害」が存在することを示した。Sortilinを含むVps10p受容体ファミリーメンバーの機能不全が、高コレステロール血症や2型糖尿病などの生活習慣病やアルツハイマー病や進行性認知症といった遅発性疾患の原因となっている可能性が多数報告されている。今後は、Vps10p関連蛋白質の機能不全による「ソーティング障害」が広範な生活習慣病の共通病理として関与する可能性を視野に入れた研究へと展開したい。
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Research Products
(15 results)