2011 Fiscal Year Annual Research Report
環境化学物質による核内受容体SXRを介した骨代謝調節作用の検討
Project/Area Number |
22591020
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Research Institution | Okinaka Memorial Institute for Medical Research |
Principal Investigator |
竹下 章 財団法人 冲中記念成人病研究所, 研究員 (20322646)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 靖博 (財)冲中記念人病研究所, 主任研究員 (50202164)
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Keywords | SXR / アセチルトリブチルクエン酸 / 薬剤性骨軟化症 / TRPV6 / 環境化学物質 / CYP3A4 |
Research Abstract |
オーファン核内受容体であるステロイド・ゼノバイオティク受容体(SXR)は、肝臓や腸管に発現しCYP3A4の転写調節をおこなっている。CYP3A4の酵素誘導をおこす薬剤はSXRにリガンドとして結合し、CYP3A4の転写を活性化するが、長期連用は慢性的に1.25vitD_3代謝を亢進し、薬剤性骨軟化症を誘発する。我々はこれまでビスフェノールA(樹脂)やフタル酸化合物(可塑剤)等の環境化学物質がSXRのリガンドとして作用する事を報告したが、薬剤添加物として認可されている可塑剤があり、長期間・相当量が生体に暴露されうる。しかしながらビタミンD代謝や骨代謝への影響は不明である。今回、薬剤添加物として用いられる可塑剤のうち、アセチルトリブチルクエン酸(ATBC)に強いSXRリガンド活性を認めた。ATBCは食品ラップ、玩具、食品添加物などフタル酸化合物の代用として汎用されている。ヒト腸管由来の培養細胞にATBCを加え培養すると1.25vitD_3と相乗的にCYP3A4遺伝子発現および酵素活性が増加し、ビタミンD受容体との相互作用が考えられた。siRNAを用いてSXRまたはVDRをノックダウンするとそれぞれの作用は減弱した。このATBCによるCYP3A4の酵素誘導はヒト培養肝細胞では欠如しており腸管特異的な作用が考えられた。ラットに経口経路と腹腔内にATBCを投与したところ、腸管でCYP3A1 mRNAの発現増加を認めたが肝臓では認められなかった。以上から、ATBCはSXRを介して腸管特異的にCYP3A4の酵素誘導をきたすと考えられた。また腸管の培養細胞を用いた研究で1.25-D3によるTRPV6の発現増加がSXRリガンドであるリファンピシン添加により抑制された。腸上皮細胞においてSXRリガンドによる活性型ビタミンD_3代謝の亢進やカルシウム輸送体の発現低下は腸粘膜からのカルシウム吸収の低下など,骨代謝に悪影響を及ぼす可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アセチルトリブチルクエン酸がSXRのリガンドとして作用することを雑誌Toxicological Sciencesに発表した。しかしながら環境化学物質アセチルトリブチルクエン酸によるCYP3A4誘導の効果は腸管で認められたものの肝臓では認めらず、ラットのvivoの研究で骨軟化症をきたすまでの変化が生じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
ラットのvivoの研究で、アセチルトリブチルクエン酸により骨軟化症をきたすまでの変化が生じていない。このため血中カルシウム リン濃度、1,25-D3,25-D3ビタミンD濃度や骨代謝マーカーを計測、また腸管におけるTRPV6発現やカルシウムの吸収の評価など生化学的な評価が必要と考えられる。
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Research Products
(3 results)