2011 Fiscal Year Annual Research Report
放射線抵抗性静止期癌細胞の損傷修復遺伝子抑制による新たな治療方法の開発
Project/Area Number |
22591391
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
川口 修 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (90276428)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川田 哲也 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60234077)
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Keywords | 静止期 / 修復抑制 / 染色体解析 / NBS1 / ATM |
Research Abstract |
放射線照射によりNBSl遺伝子はMre11,Rad50とMRN複合体を形成して、DNA二本鎖切断修復の主要な役割を担っている。MRN複合体はDNAの切断部に最初に集積されると同時にATMを切断部へ誘導し、ATMを活性化する。活性化されたATMは下流の様々な分子をリン酸化することでDNA損傷に対応する細胞周期チェックポイント機構が動き始める。そこでMRN-ATMを抑制することで、放射性感受性を増強する効果が期待される。 昨年度、ATM,NBS1遺伝子をsiRNAにて抑制する実験を行ったが、静止期では導入が困難であったので、腫瘍細胞(glioma細胞)数種および正常細胞に遺伝子を抑制することが知られているKu55933とMirinを静止期細胞に使用して、染色体損傷、生存率を測定した。各遺伝子の抑制はWestern法により確認した。染色体解析からは、いずれの物質によっても、修復の正確性が著しく低下し、異なる染色体損傷が高いことが示された。Glioma細胞はp53のwild、mutant及びPTENのwild,mutantの4種を用いたが、染色体損傷はwild type,mutantでは異なる結果が得られた。 また、リン酸化されたAKTはwild typeとmutantでは同様にKu55933とMirinにより抑制傾向にみられた。 今後は他の静止細胞、腫瘍細胞も同様に検討し、ATMまたはMRNを標的とした放射線増強による治療の有効性を検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ku55933とMirinの各遺伝子の影響は、DNA二重鎖切断に関与するATMや細胞生存に重要なシグナル分子の活性状態をWestern法によりAKT,pAKTの活性化状態を確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
近年、様々な腫瘍細胞において癌幹細胞の存在が認識され、感癌細胞が再発や転移の原因と考えられ、放射線抵抗性に深く関与することが報告されている。癌幹細胞の放射性抵抗性メカニズムとしてDNA損傷が引き金となって起こる細胞周期チェックポイントに関わるキナーゼが強く活性化されていることが報告されている。また固形腫瘍には細胞増殖を停止した静止期細胞が多く含まれていることが報告されている。 このことから、現在までの実験を癌幹細胞において行い、さらにマウスを用いたvivoで検討することで、放射線治療に対する感受性を獲得することで、新たな治療法の開発を目的とした実験を行う予定である。
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