2011 Fiscal Year Annual Research Report
トリプルアレイ法を応用した新規がん関連遺伝子の同定
Project/Area Number |
22591427
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
野本 周嗣 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (40300967)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粕谷 英樹 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00402636)
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Keywords | トリプルアレイ法 / 発現アレイ / SNPアレイ / メチレーションアレイ / 消化器癌 |
Research Abstract |
23年度は肝細胞がんにおける、トリプルアレイ解析の結果をもとに、がん関連遺伝子の候補を10数遺伝子抽出し、そのうち6種の遺伝子について、非癌部と癌部における発現の変化とメチル化の有無を調べることを行った。いずれも癌部で発現の低下を認める、癌抑制遺伝子の候補であった。癌部におけるmRNA発現の低下やメチル化の有無と臨床病理学的検討との相関を示す遺伝子は3種であり、これらについてはさらにタンパクレベルでの発現の低下を確認し、この結果と予後との相関の有無などについて検討することを行っている。2種の遺伝子では、mRNA発現,蛋白発現,メチル化の有無において、発現の低下した症例で、無再発生存期間の短縮や生存率の増悪を示し、これまで報告されていなかった新規の癌抑制遺伝子として働いている可能性が示唆されている。これらの結果については、論文の作成を開始し、また、国内外での学会での発表の準備を行っている。 胃がんにおけるトリプルアレイ解析も行うことができた。胃がんでは癌部で発現が低下する遺伝子を抽出する段階まで進行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は非癌部より癌部での発現が上昇している遺伝子、がん遺伝子の候補のものを抽出し解析する予定であったが、癌部で発現が上昇する遺伝子群は発現が低下する遺伝子と比較すると数が少ないことに加え、すでに各種の癌種でがん遺伝子であることが報告されているものがほとんどであった。これは、アレイ解析が正しく行われていることを反映していると考えるが、新規のがん遺伝子候補として解析を進めるに至っていない。 がん遺伝子候補として抽出された遺伝子では機能解析で、癌抑制遺伝子の機能解析に必要となる強制発現系と比較するとやや簡易である発現消失系を用いて行うことが可能であり、この候補遺伝子の抽出が期待されたが、これまでの段階では新規がん遺伝子候補のものを抽出できていない状況である。 また、食道がんにおいてトリプルアレイ解析を行うべき適当な症例がなく、アレイ解析が行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
癌部で発現が上昇しているがん遺伝子候補のものは、既知のものがほとんどであり、さらにSNPアレイで癌部において染色体の増幅を示す領域からの抽出やメチル化アレイで癌部の脱メチル化を示す遺伝子を抽出する方法などを行っているが、いずれにおいても解析を進めるに至る強い結果を示すものがなく、新規のがん遺伝子の候補となりうる遺伝子の同定はやや難しい状況となっている。 肝細胞がん,胃がんにおける新規がん抑制遺伝子候補のものが多数抽出されていることから、これらのがん種における、がん抑制遺伝子を確実に同定していく方策をすることが望ましいと考えている。 これまで食道がん症例のアレイ解析が行えていないが、現在の状況からアレイ解析を開始したとしても、その後抽出した遺伝子群の解析を行う段階で研究期間が終了してしまう可能性が高く、報告できる段階まで研究が進まないものと考えている。
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