2011 Fiscal Year Annual Research Report
膵癌幹細胞におけるエピジェネティックな遺伝子発現制御機構の解明とその臨床応用
Project/Area Number |
22591522
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 典宏 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (20423527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 宏介 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (00467937)
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Keywords | 膵癌 / 幹細胞 |
Research Abstract |
癌幹細胞の由来およびその特徴的なフェノタイプの背景となる分子生物学的異常はいまだ明らかにされていない。通常の幹細胞(stem cell)では、分化・生死に関連した遺伝子群の発現はエピジェネティックな制御で行われており、癌幹細胞ではこのエピジェネティックな遺伝子発現制御機構に何らかの異常が起こっている可能性が極めて高く、本研究は膵癌幹細胞におけるエピジェネティックな異常をゲノム網羅的に解析し、発癌、癌進展、薬剤耐性および予後など臨床病理学的因子との関係を明らかにし、得られた知見を臨床に応用することである。膵癌幹細胞はCD133の表面抗原を有する細胞である可能性が高く,当研究室においてソーティングを行いその間質相互作用に関して報告した。本年度は更なる表面抗原を同定すべく、rtPCRやフローサイトメトリー,Auto-MACSなどを用いCD10,CD29,CD34,CD44,CD54,CD105,CD117,CD271,Stro-1,c-Met,MSCA-1などの間葉細胞や内皮性幹細胞マーカーを用いて当研究室所有の癌細胞株での発現状況の解析をすすめた。細胞株ごとに発現状況は大きく異なっており、現在はCD105などの抗原を指標とし分取を行った。その結果、CD105陽性の膵癌細胞は膵癌間質の主体成分である膵星細胞から影響を受けやすいことが明らかとなった。すなわち特定の抗原の陽性/陰性によって膵星細胞との相互作用に差があることが認められた。さらに膵液中の候補遺伝子の異常メチル化を検出するべく200例以上の膵癌患者の膵液を凍結保存し解析を行っている。次年度は更なる種種の抗原を用いての細胞の性質の違いを検討し、より膵臓癌幹細胞のマーカーの同定を目指す。その上で、マーカーを用いて純化した膵癌幹細胞集団におけるDNAメチレーションの異常を、マイクロアレイを用いた包括的アプローチにて解析することを目標とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膵癌幹細胞の表面マーカーの絞り込みがすすみ、幹細胞の純化する方法を確立した。また、その抗原の陽性/陰性での性質の相違や周囲の間質組織との関係性を明らかにしている。逆に、今まで幹細胞のマーカーと目されてきた表面抗原で純化してもstemnessの獲得と言えないような候補遺伝子の存在も明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
膵癌細胞株、原発性膵癌組織、およびIPMN切除標本から単離した癌幹細胞集団とそれ以外の細胞集団からDNAを抽出し、プロモーターマイクロアレイを用いてメチレーションのプロファイリングを行う。腺腫から癌まで様々な悪性度を示す膵癌前駆病変IPMNにおける癌幹細胞メチル化異常を調べ、悪性度(特に浸潤癌の合併)との関連を明らかにする。また、癌幹細胞メチル化異常と抗癌剤耐性との関係も調べる。
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