2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト急性期脊髄損傷血中バイオマーカー測定と亜急性期マーカーの探索
Project/Area Number |
22591649
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
飛松 好子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所・義肢装具技術研究部, 部長 (20172174)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
緒方 徹 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所・運動機能系障害研究部, 部長 (00392192)
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Keywords | バイオマーカー / 軸索損傷 / ヒト脊髄損傷 / ELISA |
Research Abstract |
脊髄外傷の亜急性期における損傷マーカーとして、これまで本研究で用いてきたpNF-H以外のマーカーを検討した。これまでに採取済みのヒト脊髄損傷症例の末梢血サンプルを用い、神経細胞損傷マーカーであるUHCL1、グリア細胞マーカーであるGFAP,S100B、髄鞘マーカーであるMBPをそれぞれELISA法にて測定した。その結果、再現性をもって検出されたのはS100Bであり、受傷後6-12時間で高値を示し、その後減少する傾向を示した。しかし、S100Bは亜急性期には検出されず、また急性期のピーク値も重症度の相関は確認できなかった。前年度の結果からpNF-Hがヒト検体では亜急性期まで測定可能である知見があったことから、本研究での探索はpNF-Hを軸とし、その動態メカニズム等の解析から臨床的な意義づけを行うこととした。 これまで脊髄損傷後のpNF-Hはラットでは受傷後3日目にピーク値を示すものの、ヒト検体では3週後の時点でも高値を維持するデータが得られており、亜急性期の末梢血中のpNF-Hの解釈が問題となっていた。pNF-Hの起源は中枢神経組織内の軸索であることから、ヒトとラットでは中枢神経と末梢循環を隔てる脳血流関門の透過性に差があるという可能性が考えられた。そこでラットの脊髄損傷後に脳脊髄液と血液を同時に採取し、pNF-H値を時間を追って測定した。その結果、脳脊髄液と末梢血とでpNF-Hは同じ挙動を示し、ラットで見られる受傷3日目以降の血中pNF-H値の減少が脳血流関門の透過性減少によるものではないことが示された。したがって、ヒトで観察されるpNF-Hの動態は軸索変性そのものの特徴に起因すると予測される。 以上の結果から、血中pNF-H値の臨床的意義を考える上で、動物モデルとヒト臨床病態との間の解離は少なくないため、今後の解析においては臨床サンプルを用いた検討が必要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット脊損モデルからの髄液と末梢血液とのバイオマーカーpNF-Hの比較検討から、pNF-Hの動態についての知見が得られた。ヒトサンプルの収集体制が確立し、多施設からのサンプル収集が始まった。H22年度の本研究成果が英文論文として掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に向けて、臨床検体を中心に脊髄損傷受傷後の様々な時点での末梢血pNF-H値と臨床症状の対応付けを行う。また、倫理的に許容される機会があればヒト症例において脳脊髄液中と末梢血液中とのpNF-H値の比較を行う。さらに、pNF-Hの臨床的応用性を検討するために脊髄損傷以外の疾患についても測定を検討する。
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