2011 Fiscal Year Annual Research Report
低活動膀胱に対する中枢性及び末梢神経ペプチド受容体を標的とした治療戦略
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22591787
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
芳山 充晴 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 医学研究員 (20422694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中込 宙史 山梨大学, 医学部附属病院, 診療助教 (80418714)
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Keywords | 糖尿病 / 低活動膀胱 / 尿意切迫感 / 切迫性尿失禁 / 神経障害 / 下部尿路障害 |
Research Abstract |
既存の遺伝発症糖尿病(DM)マウスが低活動膀胱を含む下部尿路疾患モデルになりうるかを評価した。実験では、8~12週齢DMマウス及びそのコントロール(Cont)群マウスを使用。反射排尿機能の評価には除脳無麻酔下でのシストメトリー測定、意識下排尿行動の評価には代謝ケージ内24時間測定を行った。 1、意識下排尿行動評価:Cont群と比べ、DM群は多飲多尿であり、且、一日排尿回数が多く頻尿(35回vs.9.8回Cont群)であった。一回排尿量はCont群と比較し有意に多かった(219μl vs/146μl Cont群)。一方、排尿流量率では2群間に差は無かった。 2、反射排尿機能評価:Cont群と比べ、DM群は著明に大きな膀胱容量(240μl vs.84μl Cont群)、高い膀胱コンプライアンス(58μl/mmHg vs.24μl/mmHg Cont群)を有していた。排尿最大収縮圧、残尿量、排尿効率において2群間に差はなかった。 これら2種の評価法による結果を総合すると、DM群とCont群の差異は蓄尿相にあり、排尿相では2群間差が無いことが判明した。この結果は、DM初期には蓄尿相排尿筋活動もしくは膀胱知覚求心路に変化をもたらすが、排尿時排尿筋収縮と尿道弛緩の相互関係は維持されることを示す。更に重要なことに、Cont群では反射排尿量(84μl)よりも自発排尿量(146μl)が多いのに対し、DM群では反射排尿量(240μl)と自発排尿量(219μl)が同じであることから、Cont群では前脳から(橋排尿中枢へ)の抑制性制御による尿禁制が維持されているが、DM群ではその抑制機構が破綻しており、これがDMにおける尿意切迫感及び切迫性尿失禁と関係している可能性を示した。これら一連の結果は、DM患者における下部尿路系臨床症状の病態解明とその治療法を探索する上で重要な手掛かりとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験に用いた8~12週齢DMマウスが低活動膀胱を呈しなかったため、更に加齢したDMマウスを用いて評価をする必要があったため。その結果、30週齢を過ぎたところでようやく排尿効率が低下(低活動膀胱の指標の一つ)することが分かった。高齢DMマウスの獲得は極めて困難であることが、実験推進にあたり決定的な障壁となった。一方で、これまでの研究で糖尿病に伴う尿意切迫感と切迫性尿失禁に関する新たな知見を得ることが出来たことは評価に値する。
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Strategy for Future Research Activity |
8~12週齢の膀胱切片を用いたin vitro収縮実験を行いコントロール群と比較する。DM群において膀胱収縮性低下が確認できれば、PACAPによるその変化(収縮性の改善)も調べることができる。その他、DM群とコントロール群の間で薬理学的差異を検討する計画である。
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