2011 Fiscal Year Annual Research Report
人工毛細血管システム等を用いたヒト卵巣組織の凍結保存・再移植法の発展と確立
Project/Area Number |
22591833
|
Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
高井 泰 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (60323549)
|
Keywords | 性同一性障害 / 卵巣 / 凍結保存 / 生殖幹細胞 / アポトーシス / 血管新生 |
Research Abstract |
Cryotissue法によってガラス化凍結保存したヒト卵巣組織を融解した細胞懸濁液から、生殖細胞特異的なRNA hehcaseであるDDX4(DEAD box polypeptide 4)に対する抗体を用いたFACS(蛍光活性細胞分離法)によって、雌性生殖幹細胞(OSC)とみられる細胞を分離した。このヒトOSCは直径5-8μmの細胞で、卵巣中にごくわずかに存在し、PRDM1、DPPA3、IFITM3、TERTなどの初期生殖細胞に特異的なnRNAを発現していた。同様の方法でマウス卵巣から分離された細胞をGFPで標識して成体マウスの卵巣に移植したところ、GFPを発現した成熟卵子が得られ、マウス精子との体外受精で胚盤胞が得られた。 ヒトOSCをマウス胎仔線維芽細胞(MEF)をfeederとして4-8週間培養したところ、MEF非存在下で安定的に増殖する細胞が得られ、4ヶ月以上の培養後も前述した初期生殖細胞特異的なmRNAおよび蛋白を発現していた。更に継代の72時間後をピークとして直径35-50μmの大きな細胞が産生された。この大細胞はDDX4、KIT、YBX2、LHX8などのmRNAおよび蛋白を発現しており、卵母細胞と考えられた。更に継代72時間後のヒトOSCでは減数分裂特異的なDMC1およびSYCP3の発現を核に認め、FACSを用いた核DNA量分析では生殖細胞(卵子)と思われる1n細胞を認めた。 ヒトOSCをGFPで標識してからヒト卵巣組織の細胞懸濁液と培養したところ、直径50μm超の大きなGFP陽性細胞を小さなGFP陰性細胞が取り囲む卵胞に類似した構造を認めた。更にGFP標識ヒトOSC細胞をヒト卵巣組織片に注入し、この組織片を免疫抑制マウスに異種移植すると、1-2週間後に卵母細胞特異的なYBX2およびLHX8を発現するGFP陽性細胞を擁した未熟な卵胞を認めた。 倫理的・法的理由からヒトOSCから得られた卵子をヒト精子と受精させることはできなかったが、以上の知見は凍結保存したヒト卵巣組織からヒトOSCが分離・同定され、卵子が産生されることを強く示唆するものである。また、ヒトOSCは数ヶ月以上にわたって分裂・増殖が可能であり、雌性生殖細胞は出生後に増殖しないという従来の学説の変更を迫る画期的な発見であるとともに、悪性腫瘍患者の妊孕能温存や卵子生成メカニズムの研究にも応用が可能と思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人工毛細血管システムを用いた再移植法の検討に関しては大きな進展がみられていないが、その一方で凍結卵巣組織から雌性生殖幹細胞が分離・同定され、卵巣組織の再利用法に関して大きな可能性が認められるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
従来の研究計画に従い、凍結卵巣組織の再移植に関する検討を引き続き行う。 その一方で、凍結卵巣組織から分離・同定された雌性生殖幹細胞の性質を更に追及し、妊孕能温存に資することを目指す。
|
Research Products
(2 results)
-
[Journal Article] Oocyte formation by mitotically active germ cells purified from ovaries of reproductive-age women2012
Author(s)
White, Y.A., Woods, D.C, Takai, Y., Ishihara, O., Seki, H., Tilly, J.L.
-
Journal Title
Nat Med
Volume: 18
Pages: 413-21
DOI
Peer Reviewed
-