2012 Fiscal Year Annual Research Report
人工毛細血管システム等を用いたヒト卵巣組織の凍結保存・再移植法の発展と確立
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22591833
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
高井 泰 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (60323549)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 卵巣 / 凍結保存 / 性同一性障害 / 卵子幹細胞 / 移植 |
Research Abstract |
Cryotissue法によってガラス化凍結保存したヒト卵巣組織を融解した細胞懸濁液から、生殖細胞特異的なRNA helicaseであるDDX4(DEAD box polypeptide 4)に対する抗体を用いたFACS(蛍光活性細胞分離法)によって、卵子幹細胞(OSC)とみられる細胞を分離した。ヒトOSCは卵巣中にごくわずかに(懸濁生細胞中の約1.7%)存在し、初期生殖細胞に特異的なmRNAを発現していた。ヒトOSCsを4-8週間培養したところ、4ヶ月以上の培養後も前述した初期生殖細胞特異的なmRNAおよび蛋白を発現していた。ヒトOSCsは対象とした6人全ての卵巣から得られ、更にその後、別の30代から50代女性の摘出卵巣からも、それぞれ同様にして得られた。 ヒトOSCをGFPで標識してから卵巣組織片に注入し、この組織片を免疫抑制マウスに異種移植すると、1-2週間後に卵母細胞特異的なYBX2およびLHX8を発現するGFP陽性細胞を擁した未熟な卵胞を認めた。 倫理的・法的理由からヒトOSCから得られた卵子をヒト精子と受精させることはできなかったが、以上の知見は凍結保存したヒト卵巣組織からヒトOSCが分離・同定され、卵子が産生されることを強く示唆するものである。また、ヒトOSCは数ヶ月以上にわたって分裂・増殖が可能であり、雌性生殖細胞は出生後に増殖しないという従来の学説の変更を迫る画期的な発見である。 若年ドナーの卵子から得られた少量の卵細胞質を高齢女性の卵子に注入することにより、生殖補助医療(ART)の成功率が著しく改善したとの報告が1990年代になされたが、現在は禁止されている。そこで、患者自身から得られたヒト卵子幹細胞のミトコンドリアやその活性化因子を顕微授精時などに注入することによって、卵子の質を改善し、ART成功率を上昇させることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人工毛細血管システムを用いた再移植法の検討に関しては大きな進展がみられていないが、その一方で凍結卵巣組織から卵子幹細胞が分離・同定され、卵巣組織の再利用法に関して大きな可能性が認められるため。
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Strategy for Future Research Activity |
従来の研究計画に従い、凍結卵巣組織の再移植に関する検討を引き続き行う。 その一方で、凍結卵巣組織から分離・同定された卵子幹細胞の性質を更に追及し、妊孕能温存に資することを目指す。
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Research Products
(5 results)