2011 Fiscal Year Annual Research Report
上皮細胞増殖因子受容体の内在化を標的とした新しい頭頸部がんの治療戦略に関する研究
Project/Area Number |
22591910
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤 賢史 九州大学, 大学院・医学研究院, 助教 (20380397)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 寅彦 九州大学, 大学病院, 講師 (00284505)
|
Keywords | 上皮細胞増殖因子 / 上皮細胞増殖因子受容体 / 頭頸部癌 / c-src / srcファミリーリン酸化酵素 |
Research Abstract |
前年度の研究で、緑茶カテキンの一種である天然ポリフェノール(-)-Epigallocatechin gallate (EGCG)によって、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)が活性化を伴わずに、膜表面から細胞質に移動(内在化)することが、頭頸部癌細胞株YCU-H891において示された。本年度はそのメカニズムとして注目している、非受容体型チロシンリン酸化酵素であるc-srcに注目し研究を進めた。 研究代表者らのこれまでの予備的な実験によって、EGCGはc-srcを活性化することが示されている。そこでYCU-H891細胞をその活性化阻害剤であるPP1(20μM)で前処理したところ、EGCGによるc-src活性化が抑制された。同じ条件下でEGFRの内在化を蛍光顕微鏡で観察したところ、EGCGによって誘導されるEGFRの内在化も抑制されることがわかった。これらの結果は、EGCGが誘導するEGFRの内在化にはc-srcが関与することを強く示唆するものである。 一方、c-srcはsrcファミリー(SFK)を形成するタンパク群の一つであり、ヒトでは約10種類のSFKが知られている。このうち、c-src、yes、fynは多くの細胞株で比較的普遍的に発現しているSFKであるが、分子腫によってEGCGによる活性化に差異があるかどうかは不明であった。そこで、これらの活性化(Y416リン酸化)を比較検討したところ、EGCG処理によっては、c-srcが優位に活性化されること那示された。この活性化の違いが、EGCGによるc-srcを活性化するメカニズムに関与していると予想されるので、次年度ではここに焦点を絞って検討を進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EGFRの内在化の検討、およびそのメカニズムに関わるc-srcの活性化の検討を行っており、概ね達成できていると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、当初の計画ではなEGFR内在化を誘導する物質のスクリーニングや、内在化の後のEGFRの局在、変化を検討する予定であった。しかし、c-srcの活性化に関するメカニズムそのものを追求することは普遍的なEGFRの(活性化を伴わない)内在化の解明につながると考え、計画を変更し、c-srcの活性化メカニズムの検討に重点の置く予定とした。具体的には、他のSFKとの差異として、N末端のアシル化に違いに着目しており、これが他のSFKよりもc-srcが優位に活性化されるメカニズムに関連がある可能性がある。この仮説に基づいて、研究を進める予定である。この中で、EGCG関連物質などの効果も併せて検討する。
|