2011 Fiscal Year Annual Research Report
急性肺損傷の治療法確立に向けた肺内水分動態と網羅的気道上皮代謝物解析に関する研究
Project/Area Number |
22592023
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
久志本 成樹 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (50195434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 聡 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (00307638)
遠藤 智之 東北大学, 病院, 助教 (00400317)
工藤 大介 東北大学, 病院, 医員 (30455844)
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Keywords | 急性肺損傷 / 肺血管外水分量 / 肺血管透過性 / 急性肺水腫 |
Research Abstract |
急性肺損傷・呼吸窮迫症候群(ALI/ARDS)の臨床診断は、その原因疾患、直接・間接損傷のいかんによらず、1994年のConsensus Conferenceによる定義によりなされている。しかし、本診断基準を基にしたALI/ARDSの診断のでは、異なる呼吸不全病態を含む可能性があることから、改訂の必要性が指摘されている。ALI/ARDSの客観的診断法として科学的に妥当性をもって明確にされたものはない。本研究では、その病態である肺血管透過性亢進による肺水腫に対して、(1)肺血管外水分量と(2)肺血管透過性係数により、定量的診断基準を作成して世界に呈示することと、その臨床病態メカニズムを解明することを目的としている。 昨年度より、研究代表者が中心となり、48時間以上の人工呼吸管理が必要と判断されるP/Fratio<300の症例を対象とした動脈圧波形解析による連続心拍出量測定装置による肺血管外水分量と肺血管透過性係数、および客観的肺水腫の評価を行う多施設共同研究を実施してきた(肺血管外水分量>10mL/kgを肺水腫と定義)。301例がントリーされ、3名以上の専門医協議により、(1)ALI/ARDS、(2)心原性肺水腫、(3)胸水/無気肺に鑑別した。以下の知見を得ている。1)ALI/ARDSおよび心原性肺水腫では胸水/無気肺症例より肺血管外水分量の増加が大きく、胸水/無気肺では肺水腫の定義に達しない、2)肺血管透過性係数はALI/ARDSで有意に上昇する、3)ALI/ARDSにおける肺血管外水分量は肺血管透過性とともに胸腔内血液量により規定されること、そして、4)ALI/ARDS診断における肺血管透過性係数は2.65-2.80が特異度維持のために妥当である(特異度,0.90-0.95)。現在、論文作成が終了し、欧文誌への投稿準備中である。 また、本臨床病態メカニズムを解明するために、マイクロサンプリング法による気道上皮被覆液をサンプルとした、NMRメタボロミクスによる代謝産物の網羅的解析とともに、近年、種々の侵襲病態において注目されている、mtDNA、HMGB-1、histoneなどのdamage-associated molecular patternsの解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肺血管透過性亢進による肺水腫ALI/ARDSの定量的診断基準の作成に関しては順調に進展している。臨床病態メカニズムの解明に関しては、結果は得られてはいないものの検討が進みつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
肺血管透過性亢進による肺水腫であるALI/ARDSの定量的診断基準の作成と公表に関しては、集中治療領域の欧文学術誌に投稿し、特異度を維持した診断基準として発表する。 臨床病態メカニズムの解明に関しては、気管支鏡下マイクロサンプリング法による気道上皮被覆液を用いてNMRメタポロミクスにより気道上皮における代謝産物の網羅的解析を行う計画であるが、これをとともに、mtDNA、HMGB-1、histoneなどのdamage-associated molecular patternsに注目して解析を行う予定である。
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Research Products
(5 results)