2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳科学を応用した看護基礎教育におけるストレス対処能力の維持・形成モデルの構築
Project/Area Number |
22592413
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Research Institution | University of Human Arts and Sciences |
Principal Investigator |
本江 朝美 人間総合科学大学, 保健医療学部, 教授 (80300060)
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Keywords | 看護基礎教育 / Sense of Coherence / 脳科学 |
Research Abstract |
看護基礎教育では、高度専門分化する医療環境や看護の役割拡大を背景として、学生が期待される課題が質量共に増している。そこで、本研究では、看護学生のストレス対処能力としてのSense of Coherence(以下SOC)が、看護学生の様々な課題に対して、どのように認知・意志や対処に働くか、前頭葉の脳酸素交換機能から明らかにすることを目的としている。 本年度は、前年度の調査で、看護学生の臨地実習における困った13のケア場面の中から特にSOCと負の相関が強かった場面を絞り込み、それらの場面において、看護学生が「患者の傍に居る」、「患者を見つめる」、「患者の話を聴く」、「患者に触れる」といった4つのケアをすべきと思う気持ち(以下べき思考)、およびそうしたいと思う気持ち(以下たい思考)、Scc、特性不安、自分がケアを受ける抵抗感との関連を検討した。その結果、特性不安はSOCと有意な負の相関を示したが、べき思考、たい思考とは全く関連しなかった。一方、SOCは見る・触れるに関するべき思考とたい思考と有意な正相関を示した。また、SOCが高いほど、触れることに関するべき思考よりたい思考が有意に強く、ケアを受ける抵抗感がないことも明らかになった。 これらより、SOCはケアを行う意志や受ける意志など能動的な思考と関連し、前頭葉が関与している可能性が強く示唆された。 一方、脳酸素交換機能に関する実験の準備としては、光脳機能画像法NIRSを用いて、ケア課題による前頭葉の反応を測定し、実験方法をシミュレーションした。また脳科学者のサポートを受けて、触覚刺激による前頭葉の酸素交換機能の測定結果を分析した結果、従来の脳機能ルートには見られない触覚刺激の受容-反応のプロセスに前頭葉が関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの質問紙調査によって、SOCが前頭葉の機能であると言われている意志・思考に関与していることが明らかになった。また客観的な脳酸素交換機能のプレテストによって、前頭葉が触覚刺激と関与している可能性がみえてきた。これらによって、今後SOCがケア課題によってどのように働くかについて、前頭葉酸素交換機能で測定する妥当性が示されたといえる。また前頭葉酸素交換機能を測定する実験方法についても、プロトコルの検討とシミュレーションを行ったので、平成24年度の本実験に繋ぐ準備が整った。あとは、これらのことを論文化する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、最新の脳科学技術を用いて、ケア課題に関する実験を行う予定である。問題は使用する光脳機能画像法を実施する機械(NIRS;島津社製)の借用料や脳科学の専門家による解析サポート料の発生により8~9名の限定された被験者数による実験となることである。しかし、本研究では光脳機能画像法(NIRS)による単なる大脳皮質の局所のヘモグロビン濃度(Oxy-Hb、Deoxy-Hb、Total-Hb)を捉えるのではなく、Cerebral oxygen exchange(COE)解析を行うことによって、毛細血管レベルの脳酸素交換(脳実質への酸素の取り込み)そのものをダイレクトに捉えることができる。このことは、これまでの脳研究で主流となってきた評価法(脳波やf MRIなど)にない極めて精度の高いデータでSOCの働きの客観化を可能にする。
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Research Products
(6 results)