2012 Fiscal Year Annual Research Report
脳科学を応用した看護基礎教育におけるストレス対処能力の維持・形成モデルの構築
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22592413
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Research Institution | University of Human Arts and Sciences |
Principal Investigator |
本江 朝美 人間総合科学大学, 保健医療学部, 教授 (80300060)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | Sense of Coherence / ケア / 脳科学 / 看護教育 / ストレス対処能力 / 健康生成 / ストレス |
Research Abstract |
本年度は、看護学生のストレス対処能力(SOC:Sense of Coherence)とケアに対する意識との関連、および最新の脳科学技術による前頭葉の酸素交換機能評価(COE:Cerebral oxygen exchange)によるケア評価の有用性について発表した。さらに、ケア課題への対処へのSOCの関与を明らかにすることを目的として、触れる・見守るの両ケア課題による前頭葉酸素交換機能とSOC等を測定する実験を実施した。 それらの詳細は以下のとおりである。 1.看護学生のSOCは、ケアに対する意識(ケアをすべきとの考えやしたいと願う気持ち、および人からケアされる抵抗感)と関連した(日本看護科学学会で示説発表)。2.触れるケアによる前頭葉は、触れられることへの抵抗感の有無によって異なる反応を示すことがCOEによって明らかとなり、COEのケア評価の有用性を確認した(日本看護研究学会で示説発表、ヘルスサイエンス研究で論文発表)。3.専門的な研修会で得た知見をもとに、実験で指示するケア方法を示すビデオを作成した。4.前頭葉反応とSOCとの関連を明らかにするため、看護学生9名に対し、ケア課題に伴う前頭葉反応をCOEによって計測実験した。ケア課題は触れるケアと見守るケアとした。実験前にSOCを調査し、実験中はCOEの他、ケアの心地よさ及び相手との心の繋がりを調査した。また実験後にはケア場面の知覚体験を内省させた。これらより、看護学生のケアにおける知覚体験が明らかとなり、知覚体験と心地よさ及び心の繋がりとの関係について知見を得た。これらの結果は平成25年度に学会で報告する予定である。なおCOE結果については現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、看護基礎教育における学生への期待が質・量共に増大していることを受けて、看護学生のストレス対処能力としてのSOCが、看護学生のストレッサーへの対処にどのように働いているかを明らかにすることを目的としている。なお本研究は、その方法論として、前頭葉の脳酸素交換機能(COE)を用いることを特徴とする。 本研究課題においてこれまでに明らかになってきたことは、まずは看護学生のSOCが自己への信頼や肯定感といったケアの基盤となる要素と密接に関連していたということである。 さらに、看護学生はケアが実践できることを課題とすることから、看護が難しいと考える事例への居る・見る・聴く・触れるという4種のケアに対する思考(したいという思考・すべきという思考)とSOCとの関連についても調査した。その結果、SOCとケアに対する思考との関連が明らかとなり、ケアをしたいという思考とすべきという思考との乖離がストレスとなっている可能性が示唆された。 そこで、ストレスとなり得るケア時の反応を、脳科学の側面から客観的に評価できる方法として、まずは脳科学を応用した光脳機能画像法NIRSを用いて、ケア時の脳酸素交換機能(COE)を測定した。その結果COEによるケア評価の有用性が確認することができ、本年度に触れるケアと見守るケアの各5課題における前頭葉のCOEとSOCを測定する実験を行うに至った。したがって、おおよそ予定通りに研究が進んでいると考える。 しかし、計画立案当初に、SOCの働きを汎抵抗資源の動員と3つの対処「回避」・「ストレッサーでないと定義」・「処理」から解析する予定であったが、実験方法が極めて複雑化するため、ケア課題をストレスとなり得るものから逆に癒しとなり得るものに限定し、実験を行なった。この点に関しては、実験の精度を保証するためにも止むを得ないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進にあたっては、まずは本年度に実施した実験による成果を広く国内外で発表する予定でいる。さしあたっては、日本看護学教育学会で「看護学生の触れるケアにおける知覚体験-ケア場面の内省から-」「看護学生の見守るケアにおける知覚体験-ケア場面の内省から-」を発表し、日本看護研究学会で「触れるケアに対する患者の反応で異なる前頭葉の活動―Vector-NIRS法を用いた検討―」を発表する。「Sense of Coherenceと触れるケア中の前頭葉活動の関連」については日本看護科学学会に投稿を予定している。 なおSOCとケア課題に伴う前頭葉反応のCOEとの詳細な関係については、さらに解析をすすめていく予定である。ただし、今回実施した実験の被験者9名のSOC得点が看護学生の平均的な得点と比較して全体的に高く、高群~中群に配置されたことから、分析検討は高・中群との比較に限られることとなった。今後の分析結果次第では、今年度被験者数を若干増やし、結果の精度を高めることも視野にいれている。 またこれらの結果から、看護学生のストレッサーへのSOCの対処メカニズムを明らかにし、看護基礎教育における看護学生のSOC維持・形成モデルの構築に着手し、SOC教育の基盤づくりをしたいと考えている。
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Research Products
(4 results)