2011 Fiscal Year Annual Research Report
要介護高齢者の足のスキンケアに科学的根拠を与えるための基礎的研究
Project/Area Number |
22592592
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
甲斐 博美 大分大学, 医学部, 助教 (80443894)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三重野 英子 大分大学, 医学部, 教授 (60209723)
濱口 和之 大分大学, 医学部, 教授 (60180931)
末弘 理惠 大分大学, 医学部, 教授 (30336284)
荒川 満枝 大分大学, 医学部, 准教授 (00363549)
北村 裕和 大分大学, 医学部, 助教 (70115559)
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Keywords | フットケア / 要介護高齢者 |
Research Abstract |
本研究は、要介護高齢者の足(足部・足趾・爪)のスキンケアに科学的根拠を与えるため、要介護高齢者の足の皮膚・爪の特徴を検討する。今回は、実験による足部の皮膚の観察と施設で生活する要介護高齢者の足の実態を観察してスキンケアの基礎的根拠とするために、以下の2点を目的とする。1)献体を用いた組織形態学的実験により、足の皮膚組織と爪甲(爪母)の組織形態の特徴を明らかにする。2)施設高齢者を対象にした、縦断的観察調査のために対象の選択と調査票を完成させて調査をする。 本年度は、組織形態学的実験においては、採取した検体から顕微鏡による観察を行い、縦断的観察研究では、足の皮膚の健康状態と足の環境要因をカルテ調査を含めて観察、測定した。 目的1)に対しては、足の献体から足の皮膚と拇指の爪一部を採取し、爪白癬の有無を確認し、大腿四頭筋の厚さと幅を計測した。試料は固定条件が悪く、組織検索可能な切片が少ないが、検索を継続している。 目的2)に対しては、研究分担者とともに検討を重ねて調査票を作成した。対象者17名(男性4名、女性7名)の特性は、要介護2~3の方が12名(70.6%)、認知症高齢者の日常自立度判定はII~III17名(100%)、長谷川式認知症スケール8.0±8.7点であり、日常生活に何らかの介助が必要な状況であった。爪および足部の形態は、爪白癬8名(47.0%)、爪甲鈎湾症5名(29.4%)、外反拇指4名(23.5%)に見られた。足趾間の乾燥は、12名(70.6%)、湿潤4名(23.5%)と、皮膚の亀裂や浸軟へ進む足の健康問題が見えた。足背部の皮膚温度は、右27.7±2.7℃、左27.3±2.3℃であった。靴は介護靴14名(82.4%)で、靴を履いている時間は、10時間以上が8名、履物内温度は、右24.3±2℃、左24.2±2.4℃であり、湿度は右79.1±8,9%、左78.6±9.8%と高く、冬季の足の状態を理解した上で同一対象者の夏季の実態を探究することは、足のスキンケアの基礎に貢献すると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
組織形態学的実験では、献体から採取した試料の固定方法に苦慮し、透過電子顕微鏡による観察が困難な状況であった。試料の固定方法の問題点は、献体されてから本研究による採取までの期間が長く、固定液注入までの時間が長いことと安置場所の温度の変化による要因が考えられた。 縦断的観察調査では、爪の長さや厚さの計測における基準の検討が不十分であった。また、圧力知覚でみる感覚鈍麻の検査は、実施可能であったが、調査途中での中断や不明瞭な結果が多く、調査内容の再検討が必要であった。
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Strategy for Future Research Activity |
組織形態学的実験では、引き続き献体を用いた観察を続ける。共同分担者とともに、夏季の調査観察が開始するまでに、現在観察可能な試料により染色結果の分析をする。それらの結果は、平成24年12月から平成25年3月までの期間で、皮膚組織の構造と爪甲・爪母の組織構造の分析としてまとめる。 縦断的観察調査においては、平成24年3月までの冬季調査結果を分析し、測定困難であった調査・測定内容と調査票の再検討により、調査項目と調査方法・内容の最終決定をする。冬季の調査結果をもとに夏季の調査を実施する。組織形態学的実験の結果も含めて夏季調査の準備をする。冬季と同様に、同一対象者に対して調査の同意を確認し、観察調査を実施する。
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