2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規疼痛関連リン酸化酵素情報伝達マップ:リン酸化プロテオミクスによる痛み表情解析
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22600001
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
栗原 崇 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 准教授 (60282745)
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Keywords | 痛み / プロテオーム / シグナル伝達 / 脊髄 / 酵素 / ホールセルパッチクランプ |
Research Abstract |
近年我々は、マウスの末梢神経損傷後、後根神経節(DRG)ニューロンおよび脊髄後角ニューロンにおいてカゼインキナーゼ1ε(CK1ε)タンパクの発現量が上昇し、特にDRGニューロンで増加したεタンパクが感覚神経中枢端に運ばれ、脊髄後角において神経因性疼痛を促進的に調節することを報告した。そこで、このDRGニューロンにおけるεタンパク発現上昇に炎症は寄与するのか、また炎症性疼痛にCK1は関与するのかを検討した。急性炎症性疼痛にはカラゲニンモデル、遷延性炎症性疼痛には完全アジュバント(CFA)モデルを用い、それぞれ投与後6時間、あるいは3日の時点にδ/ε阻害薬IC261を髄腔内投与すると、両モデルにおける疼痛行動を濃度依存的に抑制した。しかし、カラゲニンあるいはCEAの投与は、脊髄およびDRGにおいて、δおよびεタンパクの有意な発現上昇をもたらさなかった。そこで、IC261の脊髄における作用メカニズムを検討するため、脊髄横断スライス標本を作製し、痛覚情報修飾に重要な脊髄後角膠様質ニューロンから膜電位固定下で自発性興奮性シナプス後電流(EPSC)、あるいは自発性抑制性シナプス後電流(IPSC)を、ホールセルパッチクランプ法を用いて記録した。コントロール群においては、IC261(1μM)の灌流適用はEPSC、IPSCの発生頻度、大きさ共に影響を与えなかった。一方、両炎症モデルにおいては、EPSCの頻度と大きさを有意に抑制したが(頻度をより顕著に抑制)、IPSCの頻度と大きさには影響しなかった。以上の結果から、カラゲニンあるいはCFAモデルマウスにおける脊髄痛覚伝達に、両起炎物質の炎症刺激がもたらすCK1δ/ε活性化が寄与し、IC261はこの活性化、特にEPSCの頻度をより顕著に抑制することから主にシナプス前における活性化を抑制することで鎮痛効果を示すことが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経障害性時や炎症性時の感覚神経および脊髄におけるCK1δ/εタンパク質の機能解析が進み、δ/ε阻害薬の髄腔内投与による鎮痛メカニズムの一端が明らかとなった。また現在、δおよびε選択的阻害薬の開発の共同研究に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
CK1δ/εの標的タンパク質の同定と疼痛発現機序への関与に関する研究を進行させるとともに、CK1阻害薬が臨床応用可能であるか否かを検討するため、全身投与(経口、腹腔内投与)可能な選択的CK1阻害薬開発の基礎的検討を進める予定である。
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