2012 Fiscal Year Annual Research Report
難病の子どもの居場所を創造するアクションリサーチー日本型子どもホスピスの探求ー
Project/Area Number |
22610010
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
濱田 裕子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60285541)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 紋佳 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10437791)
木下 義晶 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80345529)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 子どもホスピス / 小児看護 / 家族看護 / 小児緩和ケア / アクションリサーチ |
Research Abstract |
1)難病の子どもとその家族の体験およびケアニーズに関する研究:難病の子どもとその家族に対して、8家族を対象にインタビュー調査を実施した。うち2組の家族は、小児がんの終末期にある子どもと家族への継続的な実践的介入を通して、病院と在宅という看取りの場の違いによる特徴と課題が明らかになった。 2)難病の子どもとその家族のQOL・緩和ケアに関するアクションリサーチプロジェクト(1)子どもホスピスネットワークの構築:本テーマに関心のある医療職者10名で、こどもホスピスのあり方を探るためのネットワーク会議を立ち上げ、隔月でミーティングを行い、事例検討や意見交換を行った。その中で検討事例から関係者の連携により、小児在宅ターミナルケアを実践し、逝去後のデスカンファまで行い、課題を共有した。 (2)当事者や市民を巻き込んだプログラムの展開:難病の子どもとその家族を対象としたプログラムを5月と9月に実施した。5月9月とも、難病児のためのイベントには、在宅療養中の子どもと家族のみならず、入院中の小児がんの子どもも参加し、子どもホスピスの対象となるlife threatening illnessという枠組みについて示唆を得た。 (3)ホームページの構築:子どもホスピスへの啓蒙の一環として、子どもの発達支援の視点をもつ関係者等と議論しホームページを作成した。 3)日本型子どもホスピスのカタチの検討:小児がん患児の医療環境について知る目的で、この分野の先進国である英国のUniversity College of London Hospitalを視察し、10代患者の外来治療の医療環境を通して「治療の場」と「生活の場」の融合という視点を得た。また、H24年11月開設の淀川キリスト教病院のこどもホスピス病院の視察から、病院型の子どもホスピスの課題についても検討し、日本型子どもホスピスのあり方への示唆を得た
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、4つのパートからなる。まず、国内外の子どもホスピス関連施設の視察や有識者とのヒアリングを行い、現状と課題を明らかにすること。第2に難病の子どもとその家族を対象にインタビューや観察、および実践介入を行いながら緩和ケアニーズを明らかにすること。第3に市民や多職種を対象にしたフォーラム等の啓蒙教育と当事者を対象にしたQOLを高める企画実践。また、アクションリサーチのプロセスから第4の課題として医療者、専門職者とのネットワークの構築が見出された。 1については75%、2については70%、3については75%の達成度であるが、4のネットワークの構築は1年前より始まり、50%の達成度である。今はネットワークのコアとなる医療者有志とようやく繋がり、ネットワークミーティングも定期的に開催しているが、構築とまでには至っていない。 また、本研究の最終目的である、日本型子どもホスピスの探求(あり方)についての現段階までの見解は、難病児とその家族の体験と緩和ケアニーズから見出されたコアテーマ、「子どもがどんな状況にあっても(例え終末期であっても)、医療的な安心・家族生活の保証を土台とし、子どもの成長発達を支え、家族の発達を見守る存在と居場所」を軸に、既存の制度を一部利用しながらも、これまでの病院や福祉施設の枠組みを超えた新たな枠組みを提案する必要が明らかになったが、現在の日本社会に受け入れられる具体的なモデルとして提示するには、さらなる実証、実践による検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までの研究結果と課題を踏まえ、今年度は課題の最終年度である。達成度で示した、1~3の達成度を100%となるようにアクションリサーチを継続し、評価していく。また、今後は重点的に、4の課題である子どもホスピスネットワークの構築のために、ネットワークミーティングを発展させていく。 さらに、日本型子どもホスピスのあり方を探るためには、当事者のケアニーズだけではなく、難病児やその家族に関わる専門職、医療者の偏見や考え方を明らかにしたうえで、認識のズレを埋めていく必要性が見出されたため、医療者等専門職へのインタビューを実施し、最終目的である、日本型子どもホスピスのモデルを提案していく。
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