2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22615018
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
永井 由佳里 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 教授 (80320646)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田浦 俊春 神戸大学, 自然科学系先端融合研究環, 教授 (00251497)
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Keywords | デザイン / 創造性 / 没頭 / 自己言及性 / 認知科学 / 芸術 / 観察 / 視点 |
Research Abstract |
本研究は,デザインという創造的思考を研究する方法における「壁」に挑戦している.デザイナが自分を自分で観察しても客観性の問題から研究としては成立し難く,また,創造的行為においては熱中のあまり忘我の状態になるため記憶がおぼつかない.これら二つの問題(自己言及性と没頭)がデザイン研究を困難にしてきた.そこで,デザインにおける創造性の特徴の解明のために,デザイナによる自己の創造プロセスの探究としての内部観測によって重要な知見が得られることを目指し,デザイン学における創造的思考プロセスの研究方法論を議論するとともに,主体と第三者の視点と組み合わせることで,二つの問題を克服し,デザイナが自らの創造プロセスを観察しうる「内部観測」の研究方法論を構築した.さらに,構築した方法を用いて実践的研究を試行し,デザイナの内部観測の特徴を検討した. 具体的には,以下の研究を実施した. 1.デザイナによる創造プロセスの内部観測のフレームワークの検証を行った. 2.デザイナの視点融合による創造プロセスの内部観測法を考案し実践した結果を議論した. 特に(1)異なる複数の視点の融合(2)個人とチームによる創造プロセスの比較(3)レポート法による記述内容と発話プロトコルデータの質的比較,の三点で,本研究を特徴づける内側から規程されるデザイン思考の境界を確認した. 3.内部視点から見たデザイン思考のモデリングを行った. 4.デザイナの内部観測の特徴を分析し,他の研究の知見と比較した. 以上,実施した内容に基づき,得られた知見を研究の中間的成果として国内外の研究会や学会,当該領域に関係する学術ジャーナルで発表した.今後,論文や著作物の発表を予定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の研究達成度が当初の計画以上に進展し,予定より早いペースで研究を進めることができたため,本年度の目標として設定していたフレームワークの検証や,プロセス比較を精査することができ,モデリングまで完了した.本研究がチャレンジしている課題は,自己とは何かという哲学的な問題を含むため,議論を重ねる必要があり,そこに十分な時間をかけて他の分野の専門的研究者と本研究の実験で得られた結果や考察を議論できたことは,次の段階への十分な基盤を形成したと判断できる.したがって本年度の達成度は,進み方はほぼ予定通りであり,内容的には予定より深い学術的知見が得られ,次の段階が順調に進展するためには十分な達成度であると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で実験の実践者であるデザイナが,その制作を周囲に高く評価され,また研究としても面白い展開を見せ始めたことから,海外の大学との交流が予想以上の規模で展開し,英国のシェフィールドハラム大学に滞在し,実験研究を続けることになった.このような国際的展開は,当初予想していなかったので,来年度の研究を遂行するうえでの研究環境を整える必要が生じた.環境の整備には本研究の予算では不十分であることが懸念されたが,研究代表者の所属機関から今後の研究推進への助成支援を得ることができ,本研究の計画を若干拡張しつつ,残りの研究期間で,目的を達成する見込みが得られている.
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