2010 Fiscal Year Annual Research Report
非筋細胞における力学的ホメオスタシスの発現メカニズムの解明
Project/Area Number |
22650098
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
出口 真次 東北大学, 大学院・医工学研究科, 准教授 (30379713)
|
Keywords | 生体医工学 / メカノバオロジー / 生物物理 / 細胞骨格 / メカノコントローラー / メカノセンサー / ストレスファイバー / 非筋II型ミオシン |
Research Abstract |
本研究の目的は、非筋細胞が、自身に負荷される「力」の大きさと方向を感知して、自らが置かれた力学環境に適応する分子メカニズムを明らかにすることである。我々は「力の感知」と「環境への適応」の両者を可能にする分子実体は、細胞骨格アクチンと非筋II型ミオシンを主成分とした動的構造(以下、これを非筋サルコメアと呼ぶ)であると想定し、様々な実験を行った。非筋サルコメアの発生および消失のメカニズムをそれぞれ調べた。まず発生の方法には、非筋サルコメアの長軸方向への発達(アクチンの重合)あるいは短軸方向の発達(束化)の二通りが考えられる。この重合あるいは束化の区別は、アクチン重合の特異的阻害剤あるいは促進剤と、束化を促すミオシン軽鎖(MLC)のキナーゼあるいはボスファターゼを併用・組み合わせ投与することにより試みた。実験の結果、RhoAのエフェクターでMLCのキナーゼであるRho-kinaseが長軸かつ短軸の発達に作用し、同じくRhoAのエフェクターmDiaは長軸方向への発達に関与することを観察した。これら二つのRhoAエフェクターが協調的に長軸と短軸を一定制御する(非筋サルコメアの長さかつ太さを、分子ターンオーバーを経て一定にするような、物理的「力」が関わるホメオスタシス)機構が浮かび上がった。消失のメカニズムについては、まず従来考えられているようにMLCの脱リン酸化だけでは説明できない、力の除荷に伴い起こる(数秒以内の)速い非筋サルコメアの脱重合が存在することを現象的に示した。このメカニズムを、非筋II型ミオシンのMgATP加水分解サイクルの「力」依存性に基づいて説明する新しい説を提唱し、それを裏付けるデータと共に論文発表した。このように実験と理論的結果から、分子レベルでの力学環境への適応の基本的メカニズムを初めて提示することができた。
|