2011 Fiscal Year Annual Research Report
機能的胆管ネットワークを配備した肝組織の体外体内一貫構築
Project/Area Number |
22650108
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 康行 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (00235128)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
落谷 孝広 国立がん研究センター, 分子細胞治療研究分野・分野長, 分野長 (60192530)
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Keywords | 移植・再生医療 / 再生医学 / 組織工学 / 細胞・組織 / 生物・生体工学 / 極性 |
Research Abstract |
今年度は,胆管構造を含む三次元肝細胞凝集体の作成技術と内部構造や胆管と実質細胞(ラット成熟または胎児)との組織化・胆汁排泄蓄積能を評価・最適化することを目標にして研究を行い,以下の成果を得た. 第一の方法として,ラット成熟肝から採取される成熟胆管上皮細胞をコラーゲンゲルサンドイッチ法にて自発的ネットワークを形成させ,その後コラーゲンを消化することで,部分的に組織化された胆管ネットワーク断片を得,これと胎児肝細胞や成熟肝細胞とを,マイクロウェル構造を持つ特殊なプレート内に播種し,各々のウェル内でヘテロトロピックな三次元凝集体へと組織化する手法を試みた.しかしながら,胆管片と後から播種する実質細胞のとの組織化がうまく行われないことが判明し,次の第二法に移った. 第二の手法は,ラット成熟肝から採取される成熟胆管上皮細胞と組織再構築能に優れたラット胎児肝細胞とを単離後,直接マイクロウェルにて凝集体へと効率的に組織化する手法である.両者の比を胎児肝細胞:胆管上皮細胞で1:10・1:3・1:1・3:1・10:1と広範に振ってヘテロ細胞凝集塊を形成し,その組織学的・機能学的評価を行ったところ,成熟胆管上皮細胞を胎児肝細胞の3倍以上混合した凝集塊においてのみ,胆汁溜りが全体に分布し,かつ互いに連続していることが確認できた.胎児肝細胞集団の中には本来,胆管上皮細胞にも分化可能な前駆細胞が含まれているはずであるが,それらは発達した機能的胆管を生体外で構築するこのことにはあまり寄与できず,むしろ成熟胆管上皮の寄与が大きいとの結果となった.この理由は現時点では不明であるが,少なくとも現状の培養条件下では,胎児肝細胞から自律的に肝細胞と胆管上皮とをバランスよく分化誘導し,機能的胆管を配置する組織を形成するに至らなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胎児肝細胞から実質細胞と胆管上皮細胞とをバランスよく分化誘導し,自律的に胆管ネットワークが配備された凝集塊の形成を目指したが,現状では不可能であり,代わりに,生体外における胆管ネットワーク形成における成熟胆管上皮の大きな寄与を確かめることができ,移植実験への展望が開けた.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,成熟胆管上皮と胎児肝細胞とのヘテロ細胞凝集塊における胆汁排泄機能の詳細解析を行うと共に,移植による更なる高度な胆管ネットワーク系の構築にトライする.
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