Research Abstract |
脂肪性肝疾患に対し,肝脂肪化,炎症と線維化を改善するために,筋肉でのグルコースの利用率を増加させ、インスリン抵抗性を改善する必要がある.このことより,適度な運動による骨格筋量の維持は重要である。運動療法の効果判定については,脂肪化,炎症と線維化の肝病態の改善度を反映する血中の分子マーカーを探索し,非侵襲的にモニターすることが可能な新しい測定システムを構築することが今後において重要である.そこで,本年度は,中年男性を対象に行われた減量教室のデータをもとに,運動療法が肥満者の肝病態に及ぼす影響を反映する分子マーカーの探索を展開した.運動療法(E)と食事療法(D)における各検査項目の前後差(*は有意差あり)は,エネルギー摂取量(E+68vs.D-646^*;E<D),消費量(+190^*vs.-17;E>D),体重(-2.4^*vs.-8.2^*;E<D),内臓脂肪面積(-25.1^*vs.-51.9^*;E<D),除脂肪体重(-0.0^*vs.-2.5^*;E>D),VO_2max(+4.9vs.+2.6^*;NS),HOMA-IR(-0.82^*vs.-0.62;NS),AST値(-2.5vs.-6.9^*;NS),ALT値(-7.8^*vs.-12.2^*;NS),γ-GT値(-19.3^*vs.-20.1^*;NS),フェリチン値(62.9^*vs.-7.1;E>D),高感度CPR(-0.20^*vs.-0.36^*;NS),ヒアルロン酸値(-4.5vs.-21.5^*;E<D),TBARS(-3.1^*vs.-1.4^*;E>D)であった.運動療法は食事療法と比較して,エネルギー消費量を増加させる,除脂肪体重を維持する,また,フェリチン値を減少させる点で優れていた.運動療法が肥満者の肝病態に及ぼす影響を反映する分子マーカーとして,血清フェリチン値と酸化ストレスマーカー(TBARS)は有用であると考えられた.
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