2010 Fiscal Year Annual Research Report
食物連鎖の同位体効果を用いた分子レベルの新たな物質循環解析法の創出
Project/Area Number |
22651007
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
相田 真希 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 技術研究副主任 (90463091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 励一郎 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 研究員 (40390710)
SHERWOOD Smith 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 研究員 (80399568)
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Keywords | 物質循環 / 窒素安定同位体比 / 炭素安定同位体比 / 食物連鎖 / 同位体分別 |
Research Abstract |
生態系内の食物連鎖構造を知る手段として、接餌過程での窒素と炭素の安定同位体比:δ^<15>N、δ^<13>Cの濃縮係数を測定する方法が広く使われてきている。これは栄養段階(Trophic Level:TL)と共に、一定の濃縮係数のもとδ^<15>N,δ^<13>Cが増加することによる。しかし、δ^<13>C値の変動について充分な検討がなされていないため、TL解析手法は主にδ^<15>Nの変化量を中心に行われてきた。本研究課題は、「窒素・炭素の同位体効果は、一次生産者の代謝過程が上位のTLにまで影響を与える重要な役割を果たしている」という作業仮説のもと、陸域、海域、水域のデータを用いて食物連鎖のδ^<15>N-δ^<13>Cマップ上の勾配を比較し、生理生態に基づいた物質循環解析法を新たに創出することを目的として研究を行った。 本年度は、これまで誌上発表された窒素、炭素安定同位体比データを基に、陸域から海域に渡って各地域の生態系(食物連鎖)がもつΔδ^<15>N/Δδ^<13>C比について検証を行った。異なる生態系間において1つの共通する傾きが見られたことから、食物連鎖がもつΔδ^<15>N/Δδ^<13>C直線の傾きは生体中のアミノ酸代謝系駆動時における同位体分岐反応時の速度論的要因が深く関係していると考えられた。一方で、季節的にサンプリングした親潮域の定点観測から得られた結果では、特にブルーミングが強く発生した時期において、先に見られたような一定のΔδ^<15>N/Δδ^<13>C比が見られなかった。このことから、食物連鎖全体が持つΔδ^<15>N/Δδ^<13>C比には、「速度論的要因」と「生態学的要因」の2つの面が重なって見えている可能性が示唆された。これらの結果について、海洋域の解析結果をJournal of Plankton Research,陸水域の解析結果をEcological Researchに平成23年度内の投稿に向けて準備を行った。
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