2011 Fiscal Year Annual Research Report
外国語学習を取り入れた異文化理解としての中東-その実践的調査研究
Project/Area Number |
22652057
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小脇 光男 熊本大学, 国際化推進センター, 教授 (30136030)
|
Keywords | 中東の文化 / 外国語教育 / 異文化理解 / ユダヤ / イスラーム |
Research Abstract |
1.授業科目「中東の歴史と文化」(約80名の受講者)において、昨年度収集したユダヤ、イスラーム、また中東全般に関する資料、教材(映像を含む)を活用するとともに教材開発に向けての基礎づくりを試みた。資料収集の過程で、同地域に関する良質の図書が増えてきていることがわかり、受講者ための「基本図書」としてリストアップできるという意義があった。 2.受講者の基本的知識、授業に対する理解度などについて、引き続きアンケート調査を行なった。アンケート調査によれば、近年のイスラーム報道の増加や、リアルタイムに起きているアラブ諸国での民主化運動、パレスチナ問題など、同地域に関する歴史や文化面に関する受講者の意識は高いが、高校で学習する情報量に限りがあり、また断片的である。これを補うため、ユダヤとイスラームそれぞれを時系列および地域研究の形で授業を構成し、さらに日本との関わりも視野に入れることで理解度を高めた。 3.授業の中にアラビア語の入門を取り入れた。授業時間の一部を利用して行なうため、文字の読み書きの初歩を学ぶだけであったが、異質な文字を学ぶだけでも中東がより身近なものとなり、異文化として実感できるという結果が現れた。ただ、外国語学習については学習者の間に温度差があり、この点、どこまでを到達目標にすべきかなど、授業方法に多少の課題は残った。次年度は英語新聞なども利用し、当該地域の文化などを英語で学ぶ実践も試みたい。 4.2012年1月に約一週間イスラエルに滞在し、(1)「アラブの春」とアラブ系イスラエル人の現状、(2)同国における移民問題、(3)テルアビブ大学教員との言語教育に関する意見交換、(4)同大学中央図書館およびDiaspora博物館などにおけるユダヤ民族史に関する資料収集など、教育実践に必要、有益と思われる調査、資料収集を行なった。これらの成果は次年度の教育実践に生かす上で意義があった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.関連授業の開講状況は予定通りであり、アンケートによる「中東」に関する意識等の調査も、集計、分析等になお時間を要するものの、ほぼ予定通りに進んでいる。2.海外(イスラエル)でのフィールド・ワークは次年度の授業実践に生かせるだけの有益な結果を得ることができた。3.異文化理解の一助として授業に取り入れたアラビア語学習は、試行錯誤を重ねながら一応の成果を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.イスラエルで収集した資料やフィールドワークの結果を整理し、その成果を授業実践や教材開発に活用する。2.開講科目「中東の歴史と文化」、また今年度は選択外国語「ヘブライ語」においても、「中東に対するイメージや基本的な知識等」について、引き続きアンケート調査を行ない、一応の結果を得る。3.特にリアルタイムに変化する中東情勢に関し資料収集(現地の英語新聞などを含める)を補足的に行ない、授業に生かしていく。また、専門家から情報提供を得る。4.授業の中でアラビア語を取り上げ、外国語教育、異文化理解の一助として組み入れ、その実践効果をフォローする。5.最終年度に当たり、実践報告として成果を公表したい。6.当初予定していたヨーロッパの高等教育用教科書中の「中東」に関わる項目の分析については、本調査研究の途中に、一部類似のテーマを扱った図書が出版されたため計画を縮小し、これを本研究の参考とすることとした。
|