2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22653057
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
島 和博 大阪市立大学, 人権問題研究センター, 教授 (50235602)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 道彦 大阪市立大学, 人権問題研究センター, 特任教授 (00116170)
古久保 さくら 大阪市立大学, 人権問題研究センター, 准教授 (20291990)
上杉 聰 大阪市立大学, 人権問題研究センター, 特任研究員 (60573673)
朴 育美 関西外国語大学, 外国語学部, 講師 (90564534)
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Keywords | 差別・排除 / マイノリティ / 移民 / ディアスポラ |
Research Abstract |
1)戦後のブラジル移民について、その「渡航者名簿」から、和歌山県と福岡県からの渡航者のデータを抽出し、その出身市町村を集計・分析することを通じて、ブラジル移民者を多数輩出した地域を特定し、地域社会の状況と移民輩出との関連を探った。 2)特に、和歌山県の「被差別部落」と福岡県の「旧産炭地域」からのブラジルへの移民者のボリュームを推計し、このことの持っている意味についての研究を進めた。 3)昨年に続いて、ブラジル共和国のサンパウロ市において、日系人コミュニティーでの聞き取り調査を実施。特に今回は、サンパウロを拠点として活動を展開している「ブラジル被爆者平和協会」のメンバーへのインテンシブなインタビュー調査を行い、日系人マイノリティによって展開されている新たな社会運動の実態を調査した。その結果、ブラジルにおいて、「県人会」を中心とした「旧来の」活動とはまったく異なった、より普遍的でグローバルな新たな運動が始まっていることが明らかになった。 4)県人会において中心的な役割を担っている、主として高齢の移民一世へのインタビュー調査も実施し、そこからは世代交代を迎えつつある県人会および日系人社会が、大きな転換点にさしかかっていることが明らかになった。具体的には、日系人社会の価値感の根幹をなしてきた「日本人アイデンティティ」が大きく揺らぎつつあるという現実である。「日本人であること」がもはや自明の価値としては維持できなくなりつつあるという状況のもとで、より柔軟で普遍的な「日系人」コミュニティのあり方(「多文化共生」的なあり方)の模索が始まっていることを確認することができた。
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