2010 Fiscal Year Annual Research Report
連帯の規範理論における<重度知的障害者>の包摂に関する研究
Project/Area Number |
22653065
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
田中 耕一郎 北星学園大学, 社会福祉学部, 教授 (00295940)
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Keywords | 重度知的障害者 / 承認 / リベラリズム / ケア / 連帯規範 / 正義 / ヴァルネラビリティ |
Research Abstract |
平成22年度の研究課題は、<重度知的障害者>を視座に置きつつ、リベラリズムが規定した人間概念、及びその人間概念に規定された人々の反転可能性reversibility」を前提とした連帯規範の意義と限界、また、このリベラリズムの人間概念を批判した共同体主義や「ケアの倫理」における、いわば関係主義的に規定される存在承認をめぐる議論の意義と限界等について検討するとともに、このような先行の「個としての自律性」や「関係性の有無」に左右される承認要求を批判し、承認の「属性主義からの離脱」を主張する議論を検討することであった。筆者はこれらの研究課題について、政治哲学、福祉原理、倫理学等の分野における先行研究を考証しながら、リベラリズムの人間概念に異議を唱えた幾つかの倫理的思考の検討、<重度知的障害者>の承認問題におけるそれらの可能性を考察するとともに、<重度知的障害者>も含め,あらゆる人間存在を包摂し、かつ、万人が自明と認めうる普遍的な人間的属性としてヴァルネラビリティを提起し、この人間的属性から連帯規範を立ち上げることの可能性について考察した。その論考の一部をまとめた論文「<重度知的障害者>の承認をめぐって:vulnerabilityによる承認は可能か」は、『社会福祉学』(日本社会福祉学会)51(2)に掲載され、また、財としてのケアの分配をめぐる検討を含めた研究報告として、「パーソナルアシスタンス制度とケアの自律」を北海道障害学研究会(2011年1月28日:はこだて未来大学)にて報告した。
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