2011 Fiscal Year Annual Research Report
連帯の規範理論における<重度知的障害者>の包摂に関する研究
Project/Area Number |
22653065
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
田中 耕一郎 北星学園大学, 社会福祉学部, 教授 (00295940)
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Keywords | 重度知的障害者 / ケア / 連帯規範 / ヴァルネラビリティ / リベラリズム |
Research Abstract |
平成23年度は、<重度知的障害者>という視座から、リベラリズムの先行研究における幾つかの鍵 概念、すなわちロールズの「無知のヴェール」や「格差原理」、センの「機能」や「潜在能力」等の諸概念を批判的に検証したうえで、<重度知的障害者>を理論的射程に包摂した連帯規範において、「何の平等」が求められることになるのか、という点について考察することを課題としていた。先ず、「何」を平等に分配することがく重度知的障害者>をも包摂した連帯規範に適うことなのかという問いを検討するために、リベラリズムにおける連帯の規範理論を代表するジョン・ロールズの『正義論』とアマルティア・センの潜在能力アプローチについて検討を加え、これらの規範理論が<重度知的障害者>の理論的・実践的包摂において課題を抱えていることを指摘した。そのうえで、ヴァルネラビリティという人間属性から演繹される基本財としてのケアに着目し、「ケアの分配」が何を意味しているのか、さらにその実現可能性をどのように描けるのかを素描した。次に、<重度知的障害者>など、ヴァルネラビリティな存在・状態にある人々の包摂を志向する連帯規範がケアを基本財として置くことの論拠について考察し、人称的なケアを偶然性の契機に委ねるのではなく、それを何らかの形で普遍を志向する正義の論理に統合し、その権利性を定礎することの必要性、すなわち、「ケアの制度化」の必要性について論じるとともに、この「ケアの制度化」においてケアを分配することの意味と、分配されるケア資源が発動するケアの妥当性が担保されるために、ケア資源の質、分配に係る評価について原理的な考察を試みた。これらの論考を「<重度知的障害者>とケアの分配について」、及び「ケアが分配されるとき」の二本の論文としてまとめることができた。前者は北星学園大学社会福祉学部紀要第49号(2012年3月)に掲載され、後者は同紀要第50号に投稿する予定である。
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