2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜の流動性に着目した癌細胞特異的なナノ微粒子の創製
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22655050
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
新倉 謙一 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (40360896)
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Keywords | 癌細胞 / 細胞膜 / ナノ粒子合成 |
Research Abstract |
癌細胞は正常細胞に比べて粘弾性が低い(やわらかい)ことが知られている。これらの癌細胞の粘弾性減少に伴い、細胞膜の流動性が上昇していると考えられる。そこで流動性の高い細胞膜に特異的に取り込まれるナノ微粒子の表面デザインを明らかにすることを目的とし実験を行った。平成22年度の結果より、融点の低い分子(メチルなどの分岐が多い分子)の細胞内取り込み量が有意に多いことを見いだしており、それらの脂質様分子で量子ドットあるいは金ナノ粒子を被覆し、細胞内取り込みに及ぼす効果を調べた。具体的にはポリエチレングリコール(PEG)鎖の片末端にアルキル鎖を、もう一方の末端をチオールで修飾した分子(折れ曲がり分子)を合成した。この分子は柔軟性が高く、有機溶媒中では疎水部を表面に、水溶液中ではPEG領域を粒子最表層に露出することで水、有機溶媒の両方に分散性を有していた。特徴的なのは折れ曲がり分子提示粒子が水溶液からクロロホルムなどの有機相に移動できることである(NiikuraらLangmuir,2012にて発表済み)。通常界面に吸着しやすい粒子が、水有機相の界面を突破できるのは分子構造が大きく動く柔軟な分子であることを意味している。さらに蛍光を発する量子ドットを折れ曲がり分子で被覆し、癌細胞であるHeLa細胞への取り込みを調べた。通常1Onmを越えるような粒子はエンドサイトーシスにて細胞内に取り込まれるが、申請者の作った粒子はエンドサイトーシスではなく細胞膜を直接通過するメカニズムで侵入した。さらにメチルなどの分岐が多いアルキル鎖をPEG片末端に提示することで細胞膜の透過率が大きく向上した。これらより、柔軟な分子を用いることで細胞への取り込み効率が高い粒子の作製が可能であることを実証できた。
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