2010 Fiscal Year Annual Research Report
重複受精における新規受精因子の発見;配偶子融合の制御機構を探る
Project/Area Number |
22657017
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
井川 智子 独立行政法人理化学研究所, 宮城島独立主幹研究ユニット, 基幹研究所研究員 (00360488)
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Keywords | 重複受精 |
Research Abstract |
被子植物の受精では、2つの雄性配偶子(精細胞)が2種類の雌性配偶子(卵細胞と中央細胞)とそれぞれ合体する。この受精様式は「重複受精」と呼ばれ、有性生殖を行う生物種の中でも被子植物にだけ見られる独特の現象である。精細胞は花粉管によって、雌性配偶子が内包される胚珠組織まで運ばれる。その後花粉管が破裂して精細胞が雌性配偶子に到達し、受精が起こるが、2個の同一の精細胞がどのように卵細胞と中央細胞を識別して受精に至るのか、その機構は大きな謎とされている。 本研究は、重複受精を成立させる配偶子細胞特異的な分子の発見と機能解明を最終目的としている。受精の成立には配偶子細胞膜上に存在する分子が極めて重要と考えられる。そこで配偶子の細胞膜にエピトープタグを発現させて、配偶子細胞膜上に存在するタンパク質の精製と同定を行う研究アプローチを計画した。まず平成22年度は、シロイヌナズナの配偶子細胞膜にGFPなどの蛍光タンパク質を特異的に発現させた形質転換ラインの作出を試みた。精細胞、卵細胞、中央細胞に特異的に発現する遺伝子のプロモーターを用いて、原形質膜局在性タンパク質とGFPの融合タンパク質を発現させる遺伝子カセットをシロイヌナズナに形質転換した。その結果、すべての配偶子細胞について、細胞膜上に特異的にGFP蛍光が観察される形質転換ラインが得られた。 これらは顕微鏡下で明瞭な蛍光シグナルとして観察されるため、変異体の解析などにも利用可能である。現在、配偶子細胞膜タンパク質の精製に必要とされる量の花粉および雌ずい組織を回収中で、次年度以降はタンパク質の精製と同定を試みる。
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