2011 Fiscal Year Annual Research Report
重複受精における新規受精因子の発見;配偶子融合の制御機構を探る
Project/Area Number |
22657017
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
井川 智子 千葉大学, 大学院・園芸学研究科, 助教 (00360488)
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Keywords | 重複受精 / 卵細胞膜 |
Research Abstract |
被子植物の受精では、2つの雄性配偶子(精細胞)が2種類の雌性配偶子(卵細胞と中央細胞)とそれぞれ合体する。この受精様式は「重複受精」と呼ばれ、有性生殖を行う生物種の中でも被子植物にだけ見られる独特の現象である。精細胞は花粉管によって、雌性配偶子が内包される胚珠組織まで運ばれる。その後花粉管が破裂して精細胞が雌性配偶子に到達し、受精が起こるが、2個の同一の精細胞がどのように卵細胞と中央細胞を識別して受精に至るのか、その機構は大きな謎とされている。 本研究は、重複受精を成立させる配偶子細胞特異的な分子の発見と機能解明を最終目的としている。受精の成立には配偶子細胞膜上に存在する分子が極めて重要と考えられる。そこで配偶子の細胞膜にエピトープタグを発現させて、配偶子細胞膜上に存在するタンパク質の精製と同定を行う研究アプローチを計画した。まず平成22年度は、シロイヌナズナの配偶子細胞膜にGFPなどの蛍光タンパク質を特異的に発現させた形質転換ラインの作出を行った。 平成23年度では確立したマーカのうち卵細胞膜をGFPで可視化したラインを材料として、雌ずいサンプルの回収を行い、GFPを利用したpull-downによって、卵細胞膜タンパク質の精製を行った。現在、質量解析により卵細胞膜タンパク質の同定が行われている。平成24年度は、同定タンパク質とアノテーションデーターベースを照合して解析ターゲットを選出する。選定したターゲット因子について分子解析を行い、重複受精決定因子であるかの評価を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同定タンパク質の中には推定膜間ドメインを含む因子も複数同定されている。解析ツールは準備されているため、解析ターゲットが選定されれば順調な進行が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
シロイヌナズナを材料とした卵細胞膜のプロテオーム解析の例はまだないため、本研究で同定されたタンパク質は今後受精に関わる候補因子として可能性を持っている。ただし、シロイヌナズナでは解析材料の収集に多大な労力を必要とするため、今後の受精研究の発展のためには他種植物種の利用も検討していく必要がある。
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