2010 Fiscal Year Annual Research Report
有袋類ハイイロジネズミオポッサムの未成熟期上皮組織修復能の解析
Project/Area Number |
22657018
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
猪原 節之介 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (90101295)
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Keywords | ハイイロジネズミオポッサム / 有袋類 / 創傷治癒 / 未成熟期 / 皮膚 |
Research Abstract |
多くの哺乳類の胎児期皮膚の創傷は,迅速に無瘢痕治癒することが知られる。本研究は,有袋類が,他の多くの哺乳類に比し際立って未成熟状態の新生児を産むことの着目し,新生児をいわば「胎児モデル」と見立てて,未だ不明点の多い胎児期創傷治癒の解明の一助となるような,システマティックな知見を得ることを目的として創案された。研究対象の小型有袋類ハイイロジネズミオポッサムの創傷治癒にはFergusonら(1995)の先駆的研究が知られるが,これを含めて先行研究は数少なく,いずれもパイオニアワークの域を出ておらず,研究開始に当たり,胎児型創傷治癒から成体型創傷治癒への移行過程について,信頼度の高い手法による基礎データを集積する必要があるという認識に至った。 以上の視点に立ち,本研究課題の初年度計画では,直ち誕生直後の個体の解析を扱う前に,ラット(当研究室の先行研究の主要な研究対象である)齧歯類のラットの誕生直後新生児に相等する時期,即ち生後15日目のオポッサム個体を当初の研究対象として解析を進め,のちに解析する未成熟期のデータの比較対象となる基準データをつくることに主眼を置いた。創傷治癒の典型的事象として表皮の創閉鎖と肉芽形成に注目し,以下の成果を得た。 生後15日目個体に全層皮膚欠損創を施した場合,概して言えば,ラット誕生直後新生児の創傷治癒様相に類似した治癒経過をたどることが分かった。特筆すべき点は,表皮による創閉鎖に関して,ラット等の齧歯類に比し,創縁周囲の表皮の肥厚化がやや顕著化のようである。その要因には表皮細胞自体の肥大化と増殖の活発化の両者が関与しているらしい。肉芽形成に関して,α-smooth muscle actin (αSMA)発現は,生後1日目ラットと同様,術後6日をpeakとするが,αSMA陽性細胞(筋繊維芽細胞)の機能である創収縮はラットに比べやや緩やかであった。
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Research Products
(2 results)