2011 Fiscal Year Annual Research Report
有袋類ハイイロジネズミオポッサムの未成熟期上皮組織修復能の解析
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22657018
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
猪原 節之介 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (90101295)
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Keywords | ハイイロジネズミオポッサム / 有袋類 / 創傷治癒 / 末成熟期 / 皮膚 |
Research Abstract |
ハイイロジネズミオポッサム新生児期個体と成体との間で創傷治癒様式の違いの有無を検証した。オポッサム生後3日目,生後15日目個体の皮膚創傷では,いずれも成体期に典型的な癒痕はみられず,膠原繊維およびα-smooth muscle actin発現の2指標でみる限り、オポッサムの異なる発生ステージ間での治癒様式の差異はみられなかった。このうち,肉芽中のα-smooth muscle actin陽性細胞即ち筋繊維芽細胞は,傷つけ4日目以降で確認されるが,まだ未熟であり,6日目をピークに筋繊維芽細胞はその後量的に減少するがアポトーシスによる消失ではないことが明らかとなった。オポッサム皮膚の場合,上述の通り,少なくとも生後3日から15日の間には明確な治癒様式の転換期が示されないという事実は,有袋類には"未熟児"出産に適応ために表皮の角質化が真獣類に比較して早く進行するという形質(ヘテロクロニーと言える)が獲得されていることに関連していることを伺わせ,このことは特筆に値する発見と言える。また,以上のin vivo系での解析に加え,表皮細胞の初代培養系でも,表皮細胞の形質の個体発生的変化の可能性を検証した。その結果,新生児から成体にかけての増殖能に関して表皮細胞自体の性質に一定の変動が見られることと,さらには表皮細胞の初代培養に当たっては,至適培養温度や細胞接着能の違いによりオポッサムとラットとではパラメーターを一致させた比較が難しい点があることを明らかにした。これら成果の一部は日本動物学会で発表した(学会発表欄参照)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)学科長等の業務により,研究活動に充てる時間が不十分であった;2)ハイイロジネズミオポッサムの自家繁殖の効率が,徐々に向上するものの,未だ確立されたと言えない段階で,材料供給の点で,さらに改善の余地がある。
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Strategy for Future Research Activity |
課題遂行の最終年度となるが,当初計画としては,遺伝子発現解析にウェイトを置く予定であったが,これまでの研究の進捗状況を総括し,研究の主眼を,1)真獣類と有袋類の間での皮膚創傷治癒様式を形態学的視点で比較して得られる知見を集大成することと,2)第2年度(2011年度)の研究成果の一つとして見出されたオポッサム皮膚のヘテロクロニーと皮膚創傷治癒様式との関連性の追究の2点とする研究を展開してゆきたい。
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Research Products
(2 results)