2011 Fiscal Year Annual Research Report
イネばか苗病菌が生産するジベレリンは単なる病徴発現因子か?
Project/Area Number |
22658013
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柘植 尚志 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (30192644)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北野 英己 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 教授 (50144184)
|
Keywords | 植物病原糸状菌 / 植物寄生性 / ジベレリン / 病原性因子 |
Research Abstract |
イネばか苗病菌は、ジベレリン(GA)を生産し、イネに徒長症状を引き起こす。本研究では、ばか苗病菌のGA欠損株(GA^-株)を用いて、ばか苗病菌が生産するGAの病理学的機能について検証した。 GFP遺伝子を導入したばか苗病菌野生株(GA^+株)とGA^-株の胞子(10個または100個)を開花期のイネ頴花に注入接種し、籾の登熟、発芽などへの影響を調べた。その結果、GA+株接種区、GA-株接種区ともに籾は正常に登熟し、登熟率、籾重、発芽率は水注入区と同様であった。登熟した籾、玄米を蛍光顕微鏡で観察したところ、両菌株とも旺盛には蔓延していなかった。しかしながら、接種玄米を育苗土で育成したところ、GA^+株接種苗は顕著な徒長または成育異常を、GA^-株接種苗のほとんどが成育異常を示し、両菌株とも種子内に定着していたことが確認された。以上の結果は、ばか苗病菌が種子の形成、登熟時に籾内で旺盛に増殖しないこと、本菌の頴花感染(種子感染)にはGAが関与しないことを示した。 GFP発現GA^+株胞子を混和した育苗培土に、イネ、オオムギ、トマト、メロン、ダイズ、エンドウを播種したところ、イネだけでなく、他の植物にも徒長が引き起こされ、徒長植物の地際部組織内から接種菌が再分離された。一方、これら植物の根をGA^+株の胞子懸濁液に浸漬した後、無菌培土で育成したところ、徒長症状は引き起こされなかった。この結果は、本菌が根には感染できないが、イネ以外の植物にも種子発芽時には感染できることを示した。さらに、GA^+株胞子をトマト、メロン、ダイズの胚軸に注入接種したところ、徒長が引き起こされ、注入部周辺に定着した菌が観察された。また、GA^-株胞子を注入した苗でも、注入部周辺から定着した菌が検出された。以上の結果は、イネばか苗病菌が本来宿主範囲の広い、感染能力の低い内生菌であり、ジベレリン生産性を獲得することによって病原化したことを示唆した。
|