2011 Fiscal Year Annual Research Report
診療ガイドライン・添付文書の遵守状況と関連要因:レセプトデータベースの構築と活用
Project/Area Number |
22659102
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中山 健夫 京都大学, 医学研究科, 教授 (70217933)
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Keywords | J医療の質 |
Research Abstract |
近年、各領域で診療ガイドラインが整備されつつあるが、その推奨内容と臨床現場には乖離が見られる。また添付文書はじめとする薬物安全性情報の遵守程度も明らかではない。これらは「エビデンス・診療ギャップ」として医療の質を問うヘルスサービス研究の新たな課題として注目されている。診療報酬明細書(レセプト)は、経済的分析、医療費適正化の基礎資料として、また最近では疫学研究への活用に関心が高まりつつあるが、ヘルスサービス研究の視点からの活用はまだ少ない。本課題は、複数の健康保険組合の協力を得て構築されたレセプト・データベースを用いて、診療ガイドラインや添付文書の遵守状況と関連要因の検討を行った。まず国内の「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン」(2004)で推奨度A(強く奨める)とされたステロイド長期使用患者に対する骨粗鬆症治療薬の予防的投与と定期的骨密度測定の実施割合の検討を行った。3か月以上のステロイド長期使用患者2368人がデータベースから抽出され、そのうち推奨が実施されていたのは551人(23%)であること、特にステロイド低用量(プレドニゾロン5mg/日未満)の場合、推奨実施は8%に過ぎないことが明らかとなった。また心弁膜症リスクが指摘されて添付文書に心エコー実施が明示された麦角系ドパミンアゴニストに関して、パーキンソン病患者222例(麦角系ドパミンアゴニスト使用者73例、その他の抗パーキンソン薬使用者149例)を抽出した。麦角系ドパミンアゴニスト使用者での心エコー実施割合は、添付文書の改定前後で4.8%から27.9%に統計的に有意に増加していた(同時期のその他の抗パーキンソン薬使用者での心エコー実施頻度は11%)。心エコー実施頻度は添付文書の改定後に増加していたが、依然として7割以上の麦角系ドパミンアゴニスト使用者に対して実施されていないことが示された。
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Research Products
(4 results)