2011 Fiscal Year Annual Research Report
室内と屋外の亜硝酸濃度と喘息症状との関連性に関する疫学的研究
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22659134
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Research Institution | Osaka Prefectural Institute of Public Health |
Principal Investigator |
大山 正幸 大阪府立公衆衛生研究所, 衛生化学部, 主任研究員 (40175253)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 孝江 大阪府立公衆衛生研究所, 衛生化学部, 主任研究員 (70250339)
竹中 規訓 大阪府立大学, 工学研究科, 教授 (70236488)
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Keywords | 環境政策 / 公害防止・対策 / 大気汚染防止 / 喘息 / 衛生 / 亜硝酸 / 二酸化窒素 / 疫学調査 |
Research Abstract |
現在、大気環境中の窒素酸化物では二酸化窒素(NO2)が喘息に影響を及ぼすとして規制されている。しかし、NO2測定の公定法では亜硝酸もNO2として検出される。亜硝酸と喘息の関連性を示唆する論文は3報ほどあり、従来、NO2の影響とされていた喘息症状は亜硝酸が原因ではないかと考察されている。本研究は環境中亜硝酸が呼吸器に及ぼす喘息等の影響を疫学調査などで明らかにすることを周的とする。 平成22年度と同様に、喘息症状有症者5名(平成22年度と別患者)を対象に、トライアル疫学調査を実施した。23年度は22年度の測定項目に加えて、気圧測定と亜硝酸の簡易アクティブ捕集法を追加した。調査の結果、室内亜硝酸濃度が上昇した週に喘息発作が起き、22年度に認められた現象を再確認した。また、気圧の低下時に喘息発作が起きることは臨床的に知られているが、気圧低下週に亜硝酸濃度が上昇し、喘息発作が起きていた。尚、気圧が低下しなくても亜硝酸濃度が上昇した週に喘息発作が起きており、気圧低下より亜硝酸濃度上昇の方が喘息発作との関連が強い可能性があった。さらに、燃焼型暖房器具の使用で室内亜硝酸濃度やNO2濃度が上昇するが、その時の亜硝酸捕集形態は9月や10月のものと異なった。喘息症状も暖房使用時は改善しており、燃焼により生成した亜硝酸は喘息の原因にならない可能性が示唆された。 日本で亜硝酸の生体影響に関する研究を実施しているのは我々だけであるが、研究者間では亜硝酸の喘息影響が課題であることの認識が、徐々に認められつつあると感じられるようになってきた。例えば、東京では喘息患者は医療費に関して5年間で200億円の補償を国と都と道路公団と自動車メーカーから受けているが、住民団体に対する会議で亜硝酸の喘息影響も問題だと議題に挙げられたと伝え聞くに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
臨床的に、気圧の低下時に喘息発作が起きることは知られているが、そのとき室内亜硝酸濃度が上昇し発作が起きたことは、昔から知られている現象の原因が亜硝酸である可能性を示す知見となりえるため。尚、気圧の低下時に亜硝酸が生成されやすくなるのは科学的に妥当である。また、燃焼により亜硝酸やNO2の濃度が上昇しても喘息発作か起きない理由は、亜硝酸の状態が発作発症時期と異なる可能性が認められたため。
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Strategy for Future Research Activity |
信頼性の高い亜硝酸の捕集器具は高価であり、1患者分の器具の費用は約80万円程度かかる。既存の器具数から毎年5名でしか調査ができず、まだロジスティック回帰分析ができる調査規模には至っていない。また、他の研究者が亜硝酸の疫学調査を実施するのが困難な理由の一つと思わる。23年度実施した簡易アクティブ捕集器具は1患者分10万円以下なので、調査規模を比較的大きくしやすい。また分担研究者に安価な亜硝酸のパッシブサンプラーを開発してもらってる。 他の研究機構でも亜硝酸の疫学調査が実施しやすいように、安価な亜硝酸捕集方法を開発しながら、調査結果が疫学調査として解析できる規模になるよう努める予定である。
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