2010 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素に伴う脂肪組織の適応変化に関する研究:細胞死を介した幹細胞の活性化機構
Project/Area Number |
22659320
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉村 浩太郎 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60210762)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東野 琢也 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70433901)
荒木 淳 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (00508088)
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Keywords | 脂肪由来幹細胞 / 血管内皮細胞 / 虚血 / 創傷治癒 / 血管新生 |
Research Abstract |
本研究は、vivoおよびvitroにおいて脂肪組織の急性虚血環境を再現し、その適応変化を多角的に検討した。方法:1)マウス鼠径脂肪の虚血モデルを作成し、酸素分圧、組織学的変化、EACSを評価した。2)ヒト吸引脂肪組織を遊離状態におき、組織学評価とFAcsにて細胞種別に経時的生存率を比較した。3)脂肪組織構成細胞(脂肪由来幹細胞;ASC、血管内皮細胞;EC、脂肪細胞)を虚血下に培養し生存率を比較した。4)虚血環境での細胞間相互作用を検討した。 結果:マウス脂肪組織の正常酸素分圧は61.4±1.0mmHgであり、30%を下回る虚血環境になると経時的に組織学的変化が生じた。脂肪細胞の死と血液細胞の浸潤が目立つ一方で、ASCとECは増殖し、その後血管新生および脂肪新生の所見がみられた。吸引脂肪組織を虚血環境下に24時間器官培養すると、脂肪細胞の100%、血管周囲細胞の51%が壊死細胞であった。またEACS解析では生存率が10%を下回るのは、ECは24時間後、ASCは72時間後であり、細胞種によって虚血への耐性が異なることが示された。培養細胞でも虚血を維持すると脂肪細胞、EC、ASCの順番で死に至った。さらに死細胞の細胞上清によりASCの増殖能は亢進し、脂肪分化傾向を増した。 考察:脂肪組織が重度の虚血環境におかれるとまず脂肪細胞が壊死に陥り、虚血状況が改善されない場合はひき続いてEC、ASCも壊死に陥ると考えられた。細胞死に続く組織内適応変化は、死に至る細胞が放出する因子により誘導されることが示唆された。液性因子により、虚血耐性の強いASCが増殖、分化し、組織再構築を司るという環境適応のためのメカニズムの存在が示唆された。
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Research Products
(1 results)