2011 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素に伴う脂肪組織の適応変化に関する研究:細胞死を介した幹細胞の活性化機構
Project/Area Number |
22659320
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉村 浩太郎 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60210762)
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Keywords | 創傷治癒 / 虚血 / 細胞死因子 |
Research Abstract |
我々は、脂肪組織の創傷治癒(脂肪吸引後)の各段階(凝固期、炎症期、増殖期)、において、創部にそれぞれの段階に特有の因子が出ていることを報告した(Aiba-Kojima E, et al. ,Wound Repair Regen, 2007)。さらに、この初期の因子群には脂肪幹細胞を刺激する因子が含まれていることから、初期の傷害因子群を投与すれば、一連の創傷治癒過程と類似した反応を惹起できるのではないか、そのメカニズムを応用することにより、血管新生などを促す治療が可能ではないかと仮説を立てた。初期の因子群には他の段階にはあまり見られないbFGF,EGF,PDGF,TGFβが含まれており、臨床で得られた濃度組成に合わせてカクテルを作製し、AIC(脂肪傷害因子群)と名付けた。AICおよび構成因子はそれぞれ程度は違うものの(血管内皮細胞は刺激せず)脂肪幹細胞の増殖、遊走、ネットワーク形成を促進したが、創傷治癒の後段階で現れるVEGFは脂肪幹細胞を刺激せず、逆に血管内皮細胞を刺激した。脂肪幹細胞はAICのもとでは、脂肪細胞や血管構成細胞に分化しやすい傾向が見られた。一方、動物実験では阻血脂肪を外科的に作成したモデル、および阻血脂肪を持つ糖尿病マウスモデルで、AICを徐放化ビーズとして局注治療したところ、脂肪幹細胞が活性化され、血管新生が見られ、線維化が抑制され、組織の酸素分圧が有意に上昇した。本研究の結果から、AICを用いて脂肪組織における創傷治癒類似反応を惹起することにより、あらゆる虚血組織の血管新生治療に応用できる可能性が示唆された。本治療は、細胞治療ではないためコストや安全性の面で非常に優れており、臨床応用が容易である。AICはPRP含有の増殖因子を複数含んでおり、PRPを利用することで簡便に作成が可能であり、実際的な有用性が高いと考えられた。
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Research Products
(1 results)