2011 Fiscal Year Annual Research Report
線虫の中枢系嗅覚順応を担う神経回路機能の解明と匂い情報の処理過程の可視化
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22680028
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
広津 崇亮 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教 (70404035)
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Keywords | 嗅覚 / 線虫 / Ras-MAPK経路 / 嗅覚受容体 / 嗅覚順応 / RNAi / 神経可塑性 |
Research Abstract |
1.網羅的RNAi法を用いた匂いシグナルのインプットの仕組みの解明 RNAi法を用いたスクリーニングにより嗅覚受容体候補遺伝子として得られたもののうち、13個について発現神経の同定を行った。その結果、ほとんどの候補遺伝子は、嗅覚に関与する感覚神経に発現していることが分かった。srd-17はイソアミルアルコールの受容に関与している可能性があるものとして得られた遺伝子であるが、srd-17はAWC嗅覚神経(イソアミルアルコールを受容する)に発現が観察された。よって、SRD-17がイソアミルアルコールの受容体として機能している可能性が示唆された。また、srd-17は高濃度ジアセチルからの忌避に関わるものとして得られた遺伝子である。sri-14はAWC、ASH感覚神経に発現が観察された。神経特異的なsri-14のRNAiを行ったところ、ASH特異的なsri-14の機能阻害により高濃度ジアセチルからの忌避行動が阻害されることがわかった。従って、SRI-14はASH感覚神経において高濃度ジアセチルの受容体として働いている可能性が示唆される。 また、濃度によって匂いシグナルのインプットの仕組みが変化することを明らかにし、学術誌Nature Communicationsに報告した(東京大学との共同研究)。 2.in vivoライブイメージングによるRas-MAPK経路の活性の時空間的制御 本年度は特に嗅覚神経におけるRasの活性が嗅覚系をどのように制御しているかについて解析を行った。その結果、Rasの恒常活性化型変異体let-60(gf)では、嗅覚神経の下流にある介在神経の活性化が見られないことが分かった。一方、Rasの機能低下型変異体let-60(lf)では、介在神経の活性が不安定になることが観察された。よって、Rasシグナルは介在神経の活性を制御していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.匂いシグナルのインプットの仕組みの解明、2.in vivoライブイメージングによるRas-MAPK経路の活性の時空間的制御、3.嗅覚順応を制御する神経回路の同定、すべてのテーマについて当初の予定通りかそれ以上の順調な進展が見られた。研究が順調に進んだ結果、学会において多くの口頭発表を行う(7つの発表のうち5つが口頭発表)ことができた。特に、テーマ1については予想を上回る大きな進展が得られ、学術誌に論文を掲載することができた。また遺伝学会においてBestPaper賞を受賞した。
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Strategy for Future Research Activity |
すべてのテーマについて、現在まで順調に進展していることから、これまでのやり方を推し進める方向で考えている。嗅覚におけるRas-MAPK経路の働きについては、本年度、下流の介在神経の活性を制御しているという新たな発見があったことから、さらに研究を進めて、Ras-MAPK経路が嗅覚神経内でどんな分子を制御することにより介在神経の活性をコントロールしているのかについても解析を行うことを予定している。
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Research Products
(9 results)