2011 Fiscal Year Annual Research Report
レニウムと超伝導検出器を用いたニュートリノ絶対質量の測定
Project/Area Number |
22684009
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
石野 宏和 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (90323782)
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Keywords | 超伝導検出器 / STJ / MKID / ニュートリノ |
Research Abstract |
フォノン検出用STJ(superconducting tunnel junction)とMKID(microwave kinetic inductance detector)の開発を行った。純AlのみからなるSTJを作製し、今年度購入したアルファ線源(^<241>Am,1kBq)を用いて検出実験を行った。その結果、アルファ線の信号頻度、つまり検出効率は、STJの面積比に比例することがわかった。そこで、STJの面積を大きくしたいのだが、STJの主なノイズ源はジャンクションにおける漏れ電流によるショットノイズであり、漏れ電流を測定したところ、ジャンクションの周りから流れる電流が原因であることがわかった。つまり、STJの面積が大きいほど、漏れ電流が大きくなり、ノイズが大きくなる。そこで、電解液を用いた陽極酸化を用いて、Nb STJを作製したところ、漏れ電流を100pA程度まで減らすことに成功した。この電流値は本研究が要求するレベルにある。ところが、同じ方法でAl STJを作製したところ、予期していたよりも漏れ電流が減らないことがわかった。この理由は現在調査中である。 本研究では、最終的にMKIDとSTJを組み合わせた検出器を作製し、STJからの信号を周波数領域で読みだすことを目指す。MKIDはNbで作製する。本年度は、MKIDのデザインとNb薄膜形成条件の最適化を行った。デザインに関しては、MKIDの共振器とフィードラインとの静電容量結合と共振器の幅・厚みを変え、またNbのスパッター条件(電力と圧力)も変えて作製・評価した。その結果Q値として最大20万の共振器を作ることができ、本研究で要求する性能は達成できた。この研究に基づき、共振器の先端にSTJまたは直接レニウムを接合するためのAlパッドつきのMKIDをデザイン・作製し、こちらも性能通りのQ値を達成した。冷凍機に光ファイバーを通し、光を照射したところMKIDの共振ピークの振幅と位相が変化するのを確認した。また、MKIDの読み出しシステムにおいて、光によるMKIDの反応を検知することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
レニウムにおけるベータ崩壊における最大2.6keVのベータ線測定を行うのに必要な感度を達成する準備は整いつつあるが、まだ測定開始ができる段階ではない。
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Strategy for Future Research Activity |
MKIDの光による感度の研究を進め、2.6keV相当の光量を十分な精度で測定できるようにする。具体的には、測定系のノイズの起源を徹底的に洗い出すとともに、読み出しシステムを調整する。その後、55^<Fe>のX線照射実験を行い、エネルギー分解能といった基礎測定を進めると同時に、レニウムはりつけ作業を行う。STJに関しては、Al STJの作製方法を確立し、MKIDと結合した検出器を完成させる。
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