2011 Fiscal Year Annual Research Report
酸化ホウ素で覆われた融液からのゲルマニウム結晶成長における酸素の輸送機構の解明
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22686002
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
太子 敏則 信州大学, 工学部, 准教授 (90397307)
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Keywords | ゲルマニウム / 結晶成長 / 酸素 / 輸送機構 / 低転位密度 / 引き上げ法 / 高強度 / 酸化ホウ素 |
Research Abstract |
本研究では、引き上げ(CZ)法ゲルマニウム(Ge)結晶成長において、無転位成長を実現できる酸化ホウ素(B_2O_3)で覆われたGe融液からのGe単結晶育成について、酸素の輸送((1)B_2O_3からの溶解、(2)石英(SiO_2)るつぼからの溶解、(3)融液表面からの蒸発、(4)結晶中への偏析)現象を解明するとともに、(5)酸素含有Ge結晶の強度評価と転位運動についても解明することを目的とする。平成23年度は以下の知見を得た。 (1)B_2O_3でGe融液の全面を覆い、かつ酸化ゲルマニウム(GeO_2)粉末を意図的に融液に加えることによって、結晶中の転位密度を5×10^2cm^<-2>程度に抑えたままGe結晶中の格子間酸素濃度を6×10^<17>cm^<-3>程度まで高めることができた。 (2)(1)の結晶成長系において、Ge結晶中に混入する酸素は石英(SiO_2)るつぼやB_2O_3そのものの分解によって生じるのではなく、GeO_2がB_2O_3存在下で分解されて生じる反応式を提案した。融液表面がB_2O_3で完全に覆われていない場合には、過剰酸素は融液表面からGeOとなって蒸発し、結晶中の酸素濃度は著しく低くなる。 (3)結晶育成後のGe結晶中の酸素原子のうちの10%が酸素ドナーを形成しており、このドナーは550℃での熱処理で解消され、一方で350℃の熱処理によって形成が促進された。この酸素ドナーはダブルドナーであり、酸素原子16~17個によって形成、安定化することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
直径1インチながら、低転位密度で高酸素濃度となるGe結晶育成に成功しており、結晶中の酸素のドナー化に関する当初予定していなかった現象の検討、解析を進めることができた。Ge結晶中への酸素の混入機構に関する反応解析が十分に進んでいないため、結晶育成とは別に基礎的な確認実験を行って検証したい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、結晶サイズを2インチに拡大し大形Ge単結晶育成と低転位密度化(高品質化)、高酸素濃度化(高強度化)に取り組む。そのための準備、設計を進めて期間内に2~3本の結晶を育成し、評価を行う。また、Ge結晶中への酸素の混入機構に関する反応解析を同時に進めて、その反応を経て適切な酸素濃度を制御したGe単結晶の育成条件を確立する。上記反応解析においては基礎的な検討が多く含まれることから、学生を1名充てて効率的に多くの実験を実施する予定である。
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