2010 Fiscal Year Annual Research Report
PGD2産生制御による病態治療と組織再生方法の確立
Project/Area Number |
22688024
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 幸久 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (40422365)
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Keywords | 薬理学 / 獣医学 / 癌 / プロスタグランジン / 炎症 / 血管新生 / 肥満細胞 |
Research Abstract |
本研究は、"血管透過性抑制因子PGD2の産生制御を炎症病態の治療と損傷組織における血管再生に応用すること"を目的とする。初年度である平成22年度はi)PGD2産生制御機構の解明、ii)PGD2検出方法の確立、iii)慢性炎症病態への治療応用、について検討した。以下に各項目の研究結果を記載する。 1.PGD2産生制御機構の解明:PGD2を産生する炎症性細胞にはカベオラという膜の窪み構造がある。その構造蛋白質であるCaveolin-1にPGD2合成酵素(H-PGDS)とCOX-1が細胞内のCa2+濃度の上昇に伴って結合し、効率よく基質(膜リン脂質)からPGD2を産生していることを解明した。この結合にはCaveolin-1のscaffoldingドメインが関与していた。さらに膜透過性のCaveolin-1ペプチドを合成し、投与することでPGD2の産生抑制に成功した。 2.PGD2検出方法の確立:移植癌の成長や肺炎の症状増悪に伴い、PGD2の代謝産物であるPGDMの尿中への排泄量が増加することが、質量分析装置を用いた検討により明らかとなり、この病態マーカーとしての有用性が示された。 3.慢性炎症病態への治療応用:PGD2が組織の慢性炎症と繊維化に及ぼす影響を、"血管透過性と病態進行との相関"に焦点をあて検討を行った。その結果PGD2の欠損が菌体成分投与による肺炎、ブレオマイシン投与による肺線維症、炎症誘発性の大腸癌の発症や進行を大幅に促進することが分かった。またこれらの症状の増悪には、各組織における血管透過性の異常亢進が伴うことを明らかにした。
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