2010 Fiscal Year Annual Research Report
痛みの認識に基づく触知覚メカニズムの検討:脳機能画像手法を用いて
Project/Area Number |
22700279
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
本間 元康 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所成人精神保健研究部, 研究員 (20434194)
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Keywords | 触痛覚 / 視触覚クロスモダル / ラバーハンドイリュージョン / 皮膚発汗抵抗値 / 解離症状 |
Research Abstract |
本研究は、「触知覚」という心理学的現象から「解離」と呼ばれる精神病理の治療可能性までを研究対象としたトランスレーショナル研究である.精神医学領域では、不安障害の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の一症状として、防御のため自己同一性を喪失する「解離」という精神病理が報告されており、自己意識に関わる「触知覚」の基本原理が深く関与している可能性がある.本研究は、実験心理学の中で蓄積されてきた触知覚の知見を元に、「解離」の精神病理学的メカニズムを心理物理学的手法と脳機能画像分析手法を用いて検討し、最終的に臨床研究に役立つ知見の提供を目的とした.本研究では「解離」症状の臨床治療アプローチを目指すため、ラバーハンドイリュージョンと呼ばれる心理学的触錯覚に焦点を当てている.ラバーハンドイリュージョンとは、ラバーハンド(ゴムの手)とリアルハンド(自身の手)を同時に刺激し、リアルハンドは机の下に隠してラバーハンドを見続けると、触知覚をリアルハンドからではなくラバーハンドから感じる錯覚である.この錯覚は、触知覚のひとつである自己受容感覚(身体を把握する感覚)が自身以外のモノに定位するという点で興味深い.平成22年度では、一定圧力の触刺激を与える装置を作成し、健常者における行動データおよび皮膚発汗抵抗値を測定・分析した.その結果、視覚と体性感覚が矛盾する環境を学習させることによって、触痛覚は変化することが分かった.平成23年度は、心理物理学実験の手続きを踏襲し、fMRIによって脳活動を測定する.関心領域として体性感覚野、前帯状回、前頭前野、小脳の活動に注目する.行動データと脳活動の関係を分析し、感覚間矛盾に対応する脳活動の特定し、さらに視覚が触知覚に与える影響を脳機能画像の側面から検討する.
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Research Products
(11 results)