2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳損傷後片麻痺患者に対する機能的筋力トレーニングの効果
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22700533
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大畑 光司 京都大学, 医学研究科, 講師 (30300320)
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Keywords | 脳卒中 / 片麻痺 / 歩行 / 筋力 / トレーニング |
Research Abstract |
近年、脳損傷後片麻痺患者に対するリハビリテーションにおいて、「筋力トレーニング」の重要性が再評価され、筋力は運動障害を構成する重要な因子であると考えられるようになっている。しかし、筋力トレーニングによる立位や歩行などの運動機能改善に対する効果は明確ではない。通常、筋力トレーニングは随意的な筋力発揮が前提となり、筋への過負荷が重要になる。しかし、皮質脊髄路の損傷を有する片麻痺患者において、皮質性の制御と考えられる随意努力による漸増負荷抵抗トレーニングでは、必要とされる筋力発揮水準に達しない可能性があると考えられる。昨年度の結果から、麻痺側において、膝関節伸展、足関節背屈では最大随意収縮による発揮トルクの方が大きく、股関節伸展、膝関節屈曲、足関節底屈は歩行時の発揮トルクのほうが大きくなっていた。したがって、筋力発揮水準が最大筋力よりも歩行時のほうが高く、有意差の見られた筋力は、漸増負荷抵抗トレーニングより歩行トレーニングのほうが筋に過負荷を与えられる可能性があることを示している。このため、本年度の研究として無作為対象試験を脳卒中発症後6か月以上経過した片麻痺者20名を対象として行った。無作為に割り付けられた10名のトレーニング群に対して、歩行時の運動に応じて3もしくは4つの自重を用いた課題指向型のトレーニングを行わせ、この時の筋力および歩行機能の変化を調べた。トレーニングは2週間、週3回自宅で行うように指導した。その結果、股関節伸展、膝関節屈曲、足関節底屈筋力がコントロール群と比べて有意に改善するとともに、10m歩行速度およびTimed Up and Goの改善が得られた。以上の結果は昨年度の最大等尺性収縮よりも歩行時の筋力発揮が大きくなった筋群が歩行に対する課題指向型トレーニングにより改善することを示しでおり、機能的筋力トレーニングの有効性を示唆するものであると考えられた。健常者では歩行に必要な筋力は小さいため、歩行自体を行うことによる筋力増強効果は小さいが、片麻痺者では歩行においても随意的な最大収縮より大きな筋力を発揮する可能性があり、歩行トレーニングが筋力を向上させる可能性があると推察される。
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Research Products
(2 results)