Research Abstract |
新しい身体機能評価指標の提案を目的として,静止立位の鉛直方向加速度成分に着目をして時系列波形の解析を行なった.平成22年度は,健常若年者を対象として身体の鉛直方向加速度成分(Fz-ACC)の時系列変動の特徴を解析した.被験者は11名で,床反力計と三次元動作解析装置により生体信号を抽出した.被験者は床反力計上で静止立位を60秒間保持する課題で,その時の床反力鉛直成分の時系列変動を体重で除してFz-ACCを求めた.解析方法は,DFA法,実効値,最大振幅と,古典的指標の足圧中心(COP)前後方向振幅,実効値である.また,Fz-ACCと身体動揺の関連を明らかにするために,Fz-ACCを基準信号とした相互相関関数解析を行なった.対象信号を,関節トルク(Torque),身体重心点(COM),足圧中心(COP),下肢関節角度(Angle)として,各指標とFz-ACCとの相関係数および位相を明らかにした. 主な結果について,DFA法によるスケーリング指数は,0.54±0.04となりホワイトノイズ用の変動を示す事が明らかとなった.また,相互相関関数解析の結果からFz-ACCと下肢関節トルクの相関係数は,足関節トルク;-0.48±0.19,膝関節トルク;0.43±0.13,股関節トルク;0.35±017となった.Fz-ACCと下肢関節角度の相関の特徴的な点として,股関節角度;-0.47±0.14となった. 静止立位における身体機能評価について,一般的に多用されるCOPでは足関節の運動性との相関は著しく高い一方,膝関節および股関節の運動性は反映されにくい.今回の結果から,Fz-ACCでは足関節だけでなく,膝関節,股関節の運動性について反映する指標になり得る事が期待できる.つまり,ヒトの立位制御においては下肢各関節トルクおよび関節角度による抜重-荷重が行なわれるが,下肢の運動機能(運動制御)の総和が鉛直方向成分に反映されると思われ,古典的な指標とは異なる身体機能評価が可能になる事が示唆された.
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