Research Abstract |
本研究では,高齢者の鉛直方向身体加速度(Acc-z)の変動特性について,若年者および高齢者を対象者として,スケーリング指数,最大ピーク幅,変動係数,RMSの各指標を用いて多角的にAcc-z成分の特徴を解析した.対象は,健常若年者(YG)10名(年歳:26±4歳,身長:166±5cm),健常高齢者(HE)10名(年齢:66±6歳,身長:159±3cm)である.計測課題は,両上肢を体側に垂らした状態で,開眼にて直立姿勢位を30秒間保持する課題である.計測機器は重心動揺計を用いた.被験者の体重をWzとして鉛直方向荷重量Fzを求めて,FzからWzを引いた後,被験者の体重で除した時系列データ:Acc-zを作成した(単位:mm/s^2).鉛直成分の時系列データについては,スケーリング指数,RMS,最大ピーク値,変動係数を求めた.なお,スケーリング指数では,α,α1,α2,の3指標を求めた.鉛直成分のα,α1,α2は,YG:0.25±0.06,HE:0.25±0.07,α1はYG:0.22±0.07,HE:023±0.10となり,α2はYG:0.36±0.11,HE:0.35±0.11となった.α,α1,α2のいずれも2群間で有意差は認められなかった.RMSは,YG:15.3±3.7,HE:16.3±5.9となり有意差は見られなかった.最大ピーク値は,YG:58.7±13.1,HE:68.7±32.3となり有意差は見られなかった.変動係数,YG:0.15±0.04,HE:0.16±0.06となり2群間で有意差は見られなかった.Acc-zは2群のα,α1,α2のいずれも0<α<0.5の値となった.スケーリング指数がこの範囲の値を取る時,負のフィードバックの性質を表す.COPのスケーリング指数は,α〓1.2で正相関であることから,Acc-zとCOPは正相関と反相関の関係になり,静止立位時におけるAcc-zは相互に関与し合っていると思われる.しかし,2群間にいずれの指標も有意差を認めなかったことから,今後は,高齢者のAcc-zの成分とそれに関与する身体動揺時の関節トルクや筋電図との関連を明らかにしてAcc-zの変動するメカニズムを明らかにする事が必要である.
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