2011 Fiscal Year Annual Research Report
運動とサルコペニアによって上昇するインターロイキン6の骨格筋に対する生理学的意義
Project/Area Number |
22700659
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
黒坂 光寿 東海大学, 体育学部, 特定研究員 (40553970)
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Keywords | サルコペニア / 筋サテライト細胞 / 初代培養 / インターロイキン6 / myokines / 細胞内情報伝達系 |
Research Abstract |
昨年度我々は、培養実験系にてインターロイキン6(IL-6)がJAK/STAT3系を介して筋サテライト細胞の増殖能を向上させることを報告した。しかしながら、IL-6が筋サテライト細胞の増殖能を調整する詳細な分子機序については明らかではない。本年度は、IL-6が筋サテライト細胞の増殖能を向上させる分子機序を培養実験系で明らかにすることを目的とした。約11週齢のF344素雄性ラット(n=30)の両脚下肢骨格筋より、研究協力者の町田ら(2004)の方法に従って筋サテライト細胞を単離し、初代培養を行った。IL-6は、昨年度明らかになった筋サテライト細胞の増殖能を向上させる濃度(1ng/ml群)もしくは増殖能の向上を抑制させる濃度(10ng/ml群)で刺激した。JAK/STAT3系は、リン酸化したSTAT3が核内に移行することでその標的遺伝子であるCyclin DIやSOCS3遺伝子を発現させることが知られている。そこで、蛍光二重染色を行いリン酸化STAT3が核内に移行している細胞をMyoD陽性細胞当たりの割合で評価した。また、JAK/STAT3系の標的遺伝子であるCyclin DlおよびSOCS3の遺伝子発現量をRT-PCR法によって評価した。さらに、蛍光二重染色によってCyclin D1タンパク質を発現している細胞をMyoD陽性細胞当たりの割合で評価し、SOCS3タンパク質を筋分化マーカーであるmyogeninと蛍光二重染色することでその局在を確認した。リン酸化STAT3陽性細胞/MyoD陽性細胞の割合は、1ng/ml群がコントロール(CON)群(IL-6刺激なし)と比較して有意に増加した(P<0.05)が、10ng/ml群ではそのような増加は観察されなかった。また、Cyclin Dlの遺伝子発現量は、1ng/ml群がCON群と比較して有意に増加した(P<0.05)が、10ng/ml群ではそのような増加は観察されなかった。さらに、Cyclin Dl陽性細胞/MyoD陽性細胞の割合は、1ng/ml群が10ng/ml群およびCON群と比較して、有意に増加した(P<0,05)。これらの結果より、1ng/ml群では、Cyclin Dlの遺伝子やタンパク質の発現量の増加を介して、細胞周期を促進させることで増殖能を向上させる可能性が示唆された。一方、SOCS3の遺伝子発現量は、10ng/ml群がCON群および1ng/ml群と比較して、増加する傾向が観察された。そこで、10ng/ml群において、myogeninおよびSOCS3タンパク質の局在を確認したところ、myogenin陽性細胞にSOCS3タンパク質が局在していることを確認した。IL-6は、JAK/STAT3系を介してCyclin DlやSOCS3の発現量を増加させることによって増殖能を調整していることを明らかにした。
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