2010 Fiscal Year Annual Research Report
西欧魚類標本と江戸期博物図譜の現存資料調査に基づく江戸博物学の再評価
Project/Area Number |
22700842
|
Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
滝川 祐子 香川大学, 農学部, 技術補佐員 (40532932)
|
Keywords | 科学史 / 博物学 / 江戸時代 / 博物図譜 / 東西文化交流 / 魚類学 / 学名 / タイプ標本 |
Research Abstract |
本研究は、18世紀後半から19世紀前半にかけて、博物学発展の中で日本産魚類を扱った初期の研究史について取り組んでいる。特に、西欧に現存する日本産魚類標本並びに江戸時代の博物図譜や文献資料を調査し、それらの資料が日本産魚類の研究及び命名記載論文に利用された研究過程を明らかにすることを目的とした。2010年度に文献資料調査及び魚類標本資料調査のために訪問したのは、以下の研究機関である:スウェーデン、ウプサラ大学図書館、自然史博物館;ドイツ、ベルリン州立図書館、ベルリン自然史博物館;フランス、パリ国立自然史博物館図書館;イギリス、大英図書館。特に、ウプサラとベルリンに現存する日本産魚類標本資料は、シーボルトによる日本産魚類研究に先行する貴重な資料である。さらに、それらの学術資料の意義、すなわち現在も学名を担うタイプ標本であることが、本研究による現地調査で再確認された標本資料もあった。また、文献資料の調査によって、日本から西欧にもたらされた当時の国際関係や人物交流など、日本産魚類研究の背景や資料の移動の経緯も少しずつ明らかになってきている。そして標本資料とともに西欧に持ち帰られた江戸時代の図を中心とする資料が、西欧科学者らに研究資料として活用されていたことが分かってきた。当時の日欧交流史研究は、自然史研究において、特に植物学の分野から詳細な調査研究が行われているが、魚類学の分野からのアプローチも日欧交流史の解明に貢献できることが予測される。本研究の成果の一部として、2010年度日本魚類学会年会(於三重県)と第4回ヨーロッパ科学史学会国際大会(於スペイン、バルセロナ)にて口頭発表を行った。2011年も、西欧研究機関での現地調査と資料の分析を更に進める予定である。
|
Research Products
(3 results)