2010 Fiscal Year Annual Research Report
グローバルな翻訳抑制時に起こるストレス応答タンパクの選択的な翻訳促進機構の解析
Project/Area Number |
22700892
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
築茂 由則 (財)癌研究会, 癌化学療法センター ゲノム研究部, 研究員 (40469630)
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Keywords | 翻訳 / ストレス応答タンパク / 小胞体 / mRNA / リボソーム / 翻訳開始因子 / 腫瘍 / 飢餓 |
Research Abstract |
腫瘍内で見られる飢餓ストレス条件下では一時的に翻訳開始因子の活性が低下し、多くのmRNAの翻訳が抑制される。しかしその一方で、ストレス応答タンパクは翻訳が促進され癌細胞の生存に貢献する。申請者は、上記モデルの一つとして小胞体膜に局在するキナーゼ・PERKを介した翻訳調節に着目し、自らが発見した結合タンパクTBL2がストレス応答タンパクの翻訳促進に重要な分子と考え研究を進めてきた。 TBL2発現抑制下で、ストレス応答タンパクATF4の発現誘導がmRNAよりもタンパクレベルで減少することをすでに発見していたため、平成22年度はその分子機構を明らかにすることに注力した。 (1)様々な翻訳開始因子との結合を検討した結果、TBL2は自身のWD40ドメインを介して開始因子eIF2および60Sリボソームと結合しPERKとはその近傍領域で結合することが分かった。 (2)35S-Metラベル実験、ポリソーム解析による検討から、TBL2の発現抑制はグローバルなタンパク合成には大きな変化は与えないことが明らかとなった。 (3)ATF4 mRNA上の翻訳調節領域を用いたルシフェラーゼアッセイ(in cellまたはin vitro)による検討ではTBL2野生型、変異体がその活性に影響を与えたことからATF4の翻訳に重要であることが示唆された。 以上の検討から、TBL2はeIF2,60Sリボソームを含む翻訳調節複合体を形成し、ストレス応答タンパクの翻訳促進を制御しているものと考えられた。今後は標的mRNAの特異性や現在構築中のTBL2安定ノックダウン細胞を用いてストレス感受性の検討や腫瘍形成実験などを予定している。 また、申請者は糖尿病治療薬として知られるビグアナイド化合物がグルコース飢餓環境特異的に細胞毒性を発揮し、その作用には翻訳制御因子4E-BP1が重要であることを発見し米癌学会にて報告した。
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Research Products
(1 results)