2011 Fiscal Year Annual Research Report
グローバルな翻訳抑制時に起こるストレス応答タンパクの選択的な翻訳促進機構の解析
Project/Area Number |
22700892
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Research Institution | 公益財団法人がん研究会 |
Principal Investigator |
築茂 由則 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター・ゲノム研究部, 研究員 (40469630)
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Keywords | 翻訳 / ストレス応答タンパク / 小胞体 / mRNA / リボソーム / 翻訳開始因子 / 腫瘍 / 飢餓 |
Research Abstract |
腫瘍内で見られる飢餓ストレス条件下では一時的に翻訳開始因子の活性が低下し、多くのmRNAの翻訳が抑制される。しかしその一方で、ストレス応答タンパクは翻訳が促進され、がん細胞の生存に貢献する。申請者は、上記モデルの一つとして小胞体膜に局在するキナーゼ・PERKを介した翻訳調簾に着目し、自らが発見した結合タンパクTBL2がストレス応答タンパクの翻訳促進に重要な分子と考え研究を進めてきた。 昨年度までの研究で、TBL2はeIF2,60Sリボソームなどの翻訳調節因子を含む複合体を形成し、ストレス応答タンパクATF4の翻訳促進を制御していることを示した。今年度の成果は以下に示す。 (1)TBL2の変異体をさらに作製し、eIF2、60Sリボソームとの結合にはWD40ドメインが、PERKとの結合にはアミノ酸領域(32aa-74aa)がそれぞれ必須であることを明らかにした。これら変異体を用いたATF4翻訳活性評価系によりPERKや翻訳調節因子との結合が重要であることも明らかにした。また、いくつかのストレス応答タンパクの発現への影響を解析し、TBL2を介した翻訳には標的特異性があることもわかった。 (2)レンチウィルス・ノックダウンシステムを用いたTBL2の安定発現抑制がん細胞株を樹立し、グルコース飢餓、低酸素へのストレス応答、感受性を評価した。その結果、TBL2発現抑制がん細胞ではストレス下でのATF4のタンパクレベルでの発現誘導が抑制され、ストレスに脆弱になることが明らかになった。 以上、機能未知タンパクTBL2の解析を通じ、申請者はストレス応答タンパクの新たな翻訳調節機構を提示した。以上の研究内容は現在論文投稿中である。 また、申請者は糖尿病治療薬として知られるビグアナイド化合物がグルコース飢餓環境特異的に細胞毒性を発揮し、その作用には翻訳制御因子4E-BP1が重要であることを発見した。この研究は、がん分子標的治療学会にて報告、またMol Cancer Ther誌に掲載された。
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